最後のフルーツは食べ切れず、仲居さんが気を利かせてそのまま冷蔵庫にお皿ごと置いて行ってくれた。
 食後の腹ごなしも兼ねて二人で売店を見て回ったり、ライトアップされた中庭の人工滝が臨めるロビーで夜景を眺めたり。
 飽きるのが早い由弦は、部屋に帰りたそうなカオ。

 戻ると座卓の上は綺麗に片付き、床の間の前あたりに布団が二組、ぴったりくっついて畳の上に敷かれてあった。
 窓際のテーブルセットの籐イスに身体を沈め、由弦は火を点けた煙草を手に、もう片方でスマホをいじってる。
 そうだ。あたしも鈴奈さんに!
 無事に着いた報告と、・・・・・・・・・余計なコトは書くのやめよ。
 向かいに腰掛け、ラインで素敵な宿のお礼を送る。すると速攻で返信が。

 “邪念は温泉に流して、何も考えずに流されちゃえばいいのよ?”

 闘志を燃やすクマのスタンプ付きだ。・・・邪念てナニ? ていうか、流されちゃえばいいって。どんな極意?
 思わず吹き出す。
 由弦がこっちに視線を傾げるから、「ちょっと、鈴奈さんがね」。

 ついでに洋秋にも。
 “来てよかった。ありがと” 短くそれだけ。返信は無いけど既読にはなってた。