せっかくの露天風呂の風情を楽しむなんて、余裕はさらさら無く。
 檜の湯舟の中で膝の上に抱っこされてる格好で、由弦があたしの素肌に触れて。肌と肌が触れ合って。後ろからうなじや肩に口付けされるたびに、小さく震えた。

「・・・瑠衣」

 好きだ。

 ・・・・・・何度も。確かめるように由弦は繰り返す。

 あたしもね。

 今すごく・・・云いたい。

 これ以上、強情張ったって。意味ない。それももう、自分が一番分かっちゃってるコト。

 由弦に告白されてから。同じ気持ちを返せるまで、気が付けば10年超えた。ずい分待たせたって思う。・・・よく待ってたなとも思う。

 『ごめんね』?
 『ありがと』?

 ・・・あんたが訊きたいのはそんなんじゃ無いよね?

「・・・由弦」

 身も心も温めてくれそうな心地いいお湯に浸かりながら。
 躰を預けきって、されるがままになって。目を閉じまま。


「あたしも・・・由弦が好きだよ・・・・・・」

 ここにこうしてる、自分のありったけの愛しさを込めて。素直な気持ちで。
 やっとそう・・・云えた。