「それで? 由弦クンと結婚する決心ついた?」

 鈴奈さんがクスクス笑う。

 今日は、この間のお礼だって外にランチに誘われてた。
 生クリームたっぷり、ふわっふわのパンケーキが人気のお店で、予約しないと相当並ぶんだとか。
 鈴奈さんがネットで予約してくれたけど、かろうじて空いてた時間帯もすでに午後のオヤツタイムだ。

 ナイフで切り分けたパンケーキに生クリームを乗っけて口の中に放り込み、あたしはちょっと憮然と口を尖らせた。

「・・・だって。付き合ってたワケじゃないのに結婚て! はしょり過ぎって思わない?!」

「幼馴染あるある、よねー」

 うんうんと頷きながら。

「じゃあデートに誘ってもらえばいいじゃない?」 

 そこのキレイなお姉さん。簡単に言ってくれますねぇ・・・。

「今さら由弦とデートなんて無理っ」

「瑠衣ちゃん、けっこう恥ずかしがり屋さんだもんね」

 図星を指された。
 いや、だって。そりゃあ学生の頃は一緒にカラオケ行ったり、遊園地だのプールだの、どこでも二人で遊びに行ったよ? 
 でもこの歳で何をどーすりゃいいのよ。真っ昼間から手ぇ繋いで歩くとか、腕組むとか? 遊園地ではしゃぐも無いだろーし、映画、水族館?、なんとかタワーとか? 全く想像ができないんだってばー!

 一人で苦悶してると、鈴奈さんがあっけらかんとして言う。

「一泊で温泉旅行に行ってきたら? 一石二鳥よ」

「・・・でもほら、あれでも若頭だし、洋秋放っぽってくワケにもね」

 意味もなくパンケーキを突きながら、視線が泳いでしどろもどろになる。

「一日二日くらい大丈夫と思うな、きっと。洋クンにはあたしから話してあげるし。ねっそうしよう、瑠衣ちゃん!」
 
 向けられた満面の笑顔からどことなく圧を感じた。

 ・・・断れないナニかが、鈴奈さんから漂ってるよ、由弦・・・・・・。