「どうしたの、・・・いきなり」

 向かい合ったダイニングテーブルの上には、ジャスミン茶の入ったマグカップが2つ。仄かに湯気が立ち昇る。 
 黒のネクタイを緩めもしないで、ヤマトはカップに少し口を付けてから、問いかけたあたしに視線を戻した。

「・・・オレをね、姉さんが要らなくなるまで、ここに一緒にいさせて欲しい」

 いらなくなるまで。
 そんな期限を口にしたヤマトの眼差しは、少しの揺らぎも無く。じっとこっちを見つめてた。

「姉さんはオレに甘えたくないって言うんだろうけど。でもこの先は、ひとりで子供を育ててくのってカンタンじゃないだろ? 鈴奈姐さんだってレンで手一杯になる。そういうの全部考えて、姉さんにはオレが必要なんだよ」

 あたしは黙って耳を傾ける。
 言葉は、すとんすとんって。真っ直ぐココロに落ちては積もってく。 

「オレだってカンタンに言ってない。組長と征一郎兄さんにもちゃんと話したよ。組長には、半端な覚悟なら許さないって言われた。兄さんは、姉さんのしたいようにさせろって。・・・オレの覚悟がハンパだって思ったら、すぐ追い出してくれていい。だから」

 そこまで言ってヤマトは金色の頭を垂れた。


「オレに、姉さんとちーを守らせてください。・・・お願いします」