それから他愛もないお喋りを沢山して。
 帰り際、言わないといけないコトを忘れずに伝える。

「鈴奈さん。おばあちゃんがお産のことは任せろって。洋秋のおばさん、あんまりそういうのやってくれないでしょ・・・?」

 あたしがぎこちなく笑って言うと。
 鈴奈さんが一瞬、泣きそうに顔を歪めた。

 照基おじさんともあまり夫婦仲が良くなかったおばさんは、洋秋のコトも無関心に近い。
 おばあちゃんは、『出来損ないの嫁』に代わってひ孫を取り上げるんだと意気込んでて。・・・お産婆さんじゃないんだし、今は病院で生まれるんだけどね。

 鈴奈さんは自分の実家には勘当されたようなもので、初めてのお産なのに頼れない。うちの両親も、それじゃ心細いはずだと全面協力の構えなのだ。

「生まれたら、しばらくおばあちゃん家にいてもいいし。とにかく心配しないで、元気に赤ちゃん産むことだけ考えててね。洋秋は大事なイトコで、鈴奈さんももう身内なんだもん。遠慮しなくていいんだから!」 

「・・・・・・ありがとぉ・・・」

 顔を覆って泣き出した“お姉さん”の肩に手を置いて、安心させるように。
 
「みんないるから大丈夫だよ、鈴奈さん」

 力強く励ますと顔を上げて泣き笑いを見せてくれた。




 何だかこの瞬間に。洋秋への想いが清々しく吹っ切れた気がした。
 あたし達は切っても切れない“家族”なんだなぁって。
 
 切なかったけど。・・・嬉しくもあった。

 あたしと洋秋には絆がある。永遠に絶えることのない。