同じにならなくていい。

 ふたりの言葉には由弦と似た思いが滲んでた。あたしの気の済むようにさせたかった気持ちも伝わってきた。
 どこまでも優しい兄たちに胸が詰まって、何も云えなくなる。

 涙を零すあたしを胸元に引き寄せ、征一郎さんは子供をあやすみたいに髪を撫で続けた。

「・・・由弦を殺した男は死んだ。だからもうお前はここを出たら忘れろ。可愛い娘の母親に戻って毎日笑え。それだけでいい。・・・由弦なら、そう望むはずだろう」


 
 憎しみも悲しみも。一生消えたりしない。

 思い出して、やっぱり泣くんだろう。

 なんで、どうしてって。口惜しくて泣くんだろう。

 由弦に会いたくて、逢いたくて。寂しくて泣くんだろう。

 人生の半分くらい泣きっぱなしかも知れない。

 
 でもね。
 気が付いたら毎日ちはると笑ってる。何も考えなくても笑顔になってる。
 これからも、そうしていけばいいのかな。
 それでいいのかな。

 ・・・ねぇ由弦。
 
 
 そうしろって。復讐なんか忘れろ、って。
 それを云いたくて、・・・来たの?