「由弦クン、イイ男だって思うけど」

 鈴奈さんが少し真面目に視線を傾げるから。
 ・・・・・・それは分からなくもない。って思うけど!

「・・・だからムカつくんですよ」

 あたしも溜め息雑じりにタルトにフォークを入れ、さっぱりした酸味とクリームチーズのコクのある風味を舌の上で溶かした。

「難しく考えずに、そう思ってるなら思ってることぜんぶ由弦クンにぶつけちゃえばいいじゃない? きっと受け止めてくれるわよ彼なら」

 お姉さんらしく、鈴奈さんは優しく諭してくれる。

 分かってるそれも・・・・・・。
 由弦はきっと、あたしなんかよりずっとオトナだから。
 
 なのに足踏みする。

「・・・・・・なんかいろいろ思い切りがつかないってゆーか・・・」
 
 洋秋への想いにじゃない。

 洋秋がダメだからじゃあ今度は、って。

 そんなカンタンにいかない。
 
 由弦があたしをずっと好きなのを知ってるから余計に。

 気持ちを利用するみたいで。

 ・・・そんなの、あたしが嫌だ。



 由弦が大事だから。