これは急にいつだったか、豪が始めた"ゲーム"。
豪の気分次第で始めて、1回ずつ相手をドキッとさせる行動をして、より相手をドキッとさせた方が勝ちってゲーム。
豪に対して、こんなに微動だにしない女の子はあたしだけらしくて、楽しそうにそのゲームを続けてる。
急に始まるのが、ちょっとダルいけど、まあそこそこ楽しい。
だっていつもあたしが勝つから。
豪はカッコイイんだろうけど、あたしにとっちゃお兄ちゃんみたいなものだから、ドキッとするより、また始まったよっていう気持ちの方が先に来る。
「では、時雨さん。何が欲しいですか?」
勝者には欲しい物を買わなければならない、そう。
「香水、切れそうだから欲しい」
「りょーかい。同じやつでいいんだろ?」
「うん。同じやつ」
豪が使ってる香水。
たまたまあたしのお父さんと同じ匂いのやつで、あたしもそれを使ってる。
あたしは、脱衣所を出て、紙袋をテーブルの上に置く。
バームクーヘンを冷蔵庫に入れて、洗面所へ向かい、歯磨きをする。
