「なーにー」



あたしはバームクーヘンまだ食べ終わってないんですけど。



あたしの目の前には、ご立派な胸板さんが、雫で濡れている。



「なあ」



色っペー声を出す豪さんを見上げて、あたしは豪にいわゆる壁ドンというものをされていたことに気づく。




「はーいー」




「お前さ?もうちょっと警戒するとかねえの?」




あーあ。始まったよ。




豪はあたしの唇の端を親指で撫でるようにし、その指を舐めた。




あたしは人差し指を、豪の喉仏から胸板までゆっくりなぞり、胸板に触れるか触れないかほどのキスを落とした。




「……チュッ、ありがと」




首を傾げ、上目遣いで言うと、豪は舌打ちをした。




「ハァァァ、また俺の負けかよ」



観念した豪はあたしから離れ、服を着始める。



「お前さ?そんなのどこで教わってくんだよ」