柚姫と初めて話したのは、このバスがきっかけ。


決していい出会いな訳じゃない。


入学早々、柚姫は痴漢に遭ってた。

あたしが腕をひねりあげて、


『運転手さん、痴漢です。バス停めてもらえますか』


そう言って、バスを降りて警察を呼んだ。


よれよれのスーツを来たメガネの中年男を、警察に預け、柚姫とあたしも警察に話に行った。学校にも連絡して、柚姫の親さんにも。


柚姫本人は、ショックでぼーっとしていて何も話せる状態になかったから、あたしが全部説明した。


多分、その話を聞くのも辛かったと思う。


警察の人に一通り話終わったあと、抱きしめてあげた。


『怖かったね』


それからは端を切ったように、泣き出した。

その数分後、ご両親が来てくれて、柚姫も安心したのか、泣き収まった。



柚姫の家をご両親から聞いて、次の日から柚姫の家に歩いて迎えに行き、一緒に歩いて登下校するようになった。


何故か、守ってあげたいと思った。


ずっと、あたし自身、今まで誰かに頼ってばかりだったからかもしれない。


柚姫は、サラリーマンやバスを見ると、震え出す。大丈夫、大丈夫と何度も繰り返しながら、隠すように歩く。


そんな生活を送って2ヶ月ほど。

柚姫は立ち直って、今の状態まで回復した。

悠真くんに出会ったらそれ以上に元気になって。