「本当に?」


「いや、嘘だな。心配になった」



八の字になった眉。
何を言いたいか、分かってる。

でも、その言葉に返す良い言葉はない。



だから、あたしはそれ以上聞くのをやめた。


____


キーンコーンカーンコーン


「時雨、一緒に帰ろ!!」


教室の出入口から叫ぶ柚姫。


今日は多分、滝田先輩も来ないだろうし、来てくれても一緒に帰る気分じゃない。



カバンを手に、柚姫に近寄る。

頭をポンポンと撫でて、


「行こっか」


「うん!久々の美人だ〜〜」


「へー、柚姫は美人だからあたしといるんだー?それだけなのかー悲しいなー」


棒読みのセリフをスラスラと発する。

美人だから、そんな理由で一緒にいるわけじゃないことなんか、1番あたしが分かってることだけどね。


可愛いから困らせたくなる。



「違うよ!!!違うの知ってるでしょ!時雨が1番!もー意地悪しないで!」


あたしの腕を揺さぶる柚姫は、ぷんぷん怒ってる。

かーわいいなーホント。



バス停に着いて、バスに乗る。

途中で柚姫の家の近くのバス停にも着くから、一緒。