「本当に?」
「いや、嘘だな。心配になった」
八の字になった眉。
何を言いたいか、分かってる。
でも、その言葉に返す良い言葉はない。
だから、あたしはそれ以上聞くのをやめた。
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キーンコーンカーンコーン
「時雨、一緒に帰ろ!!」
教室の出入口から叫ぶ柚姫。
今日は多分、滝田先輩も来ないだろうし、来てくれても一緒に帰る気分じゃない。
カバンを手に、柚姫に近寄る。
頭をポンポンと撫でて、
「行こっか」
「うん!久々の美人だ〜〜」
「へー、柚姫は美人だからあたしといるんだー?それだけなのかー悲しいなー」
棒読みのセリフをスラスラと発する。
美人だから、そんな理由で一緒にいるわけじゃないことなんか、1番あたしが分かってることだけどね。
可愛いから困らせたくなる。
「違うよ!!!違うの知ってるでしょ!時雨が1番!もー意地悪しないで!」
あたしの腕を揺さぶる柚姫は、ぷんぷん怒ってる。
かーわいいなーホント。
バス停に着いて、バスに乗る。
途中で柚姫の家の近くのバス停にも着くから、一緒。
