雨のにおい







あたしの持っていたミネラルウォーターの箱を軽々、ひょいっと片手で持ち、路駐してあった豪の車に乗せられる。


あたしの手にあった袋も。




「七瀬」




放置していた女の人に声をかける豪。





「今日は助かった。例の案件、明日よろしく頼むな、お疲れ様」



「えっ、お帰りになっちゃうんですか?」



うるうるな瞳で豪を見る女の人。



あたしにゃ、あんなんできひんわ。




「おー、腹減った」



正直者だな。




「一緒に食べませんか?」




おーう、君。あたしが見えないのか?ん?




「悪い。こいつの飯が美味いもんで。帰るわー」




あたしの頭を容赦なくガシガシと撫でる豪。




「その子、は?」





「んー、彼女?」



絶対、この女の人巻きたいだけでしょ?あんた。




「初めまして、豪の従妹で雪司さんの姪の柊時雨です。いつもお世話になっております。すみません、こんな格好で」




静かに頭を下げ、笑顔を作る。



女の人は、驚き固まってしまった。




「暗くなってきてしまったので、今日はここで失礼します」




あたしはクルっと振り返り、豪の腕を掴み、運転席に押し込んだ。そしてあたしはもう一度七瀬と呼ばれたその女の人に頭を下げ、車に乗った。




「オラ、八宝菜食うぞ」




「やっぱお前、イケメンだな」




雪司さんは、豪のお父さんで日本のアパレル業界のトップを争っているような企業の社長さんだったりする。世界にも規模を広めていってるみたい。



そこの副社長が、豪。


跡取りね。歳は確か、26?


見えないよね〜。


ま、あたしの前だけだろうけど。



外では大人なんだろう。