雨のにおい







「あたしここなので」




あ、やばい。


この人いるの忘れてた。




「あれ?ここって、織人の新しいマンションじゃね?」



「そうなんですか?」



知らなかったかのように、演技する。




「まあ。」



五十嵐織人も、隣人だとは話が拗れるから言わないでおくつもりらしい。




「あ!もしかして、昨日の、五十嵐…」




「五十嵐織人。快斗、俺がこいつ知ってるのは、こいつの隣の部屋だから。そんだけ。じゃーな」



あたしの小芝居に付き合うのが面倒臭くなったのか、一方的に話してマンションに歩いていってしまった。





「あー、怒らせちゃいましたかね。昨日わざわざ挨拶に来てもらったんですけど、なんせ寝起きで顔が、」




「ふっ、大丈夫だよ。そんな気が短いヤツじゃないし。多分俺に気を使っただけだよ。」




俺は別にこの女には興味無い、ってか。




「そーいや、用事あったんだったよな?」




「あ、はい!そーでした!」




「今日はありがとう。じゃー明日な」




「またあした」