雨のにおい







「は……?快斗の好きな奴って、柊時雨?」



うわぁ、って顔をする。


昨日と同じだ。


この人、あたしの事が好きじゃないらしい。




「織人、柊のこと知ってるのか?」



「まあ、なんつーか、まあ」



「なんで?お前、人に興味なんか示さないくせに。特に女の子とか」



あ、なんかプチ喧嘩が始まりそう。

滝田先輩ご機嫌がちょっと斜めって言ってる気がする。





「滝田先輩、あたし今日家帰ったあとに用事があって!行きましょ?」




これは本当のこと。

なんせ家には人参とごぼうしかないから、買い物しなきゃいけない。





渋々歩き出した先輩。



あーなんか、あたしが好かれづらいことが目に見えたな。


「え?なんで時雨さんと快斗先輩が?」



「柊時雨って、ビッチなんでしょ?」



「なんであんな尻軽が」




そんな声が聞こえるように話されるのなんか、日常茶判事。




多分、五十嵐織人の、うわぁって声や顔は、あたしの噂を聞いてるからだろう。