「今日もぼっち?」
屋上にいるといつも聞こえてくるぶっきらぼうな声。
「ひとりが好きなの」
私はいつもこう答える。
「俺も一緒に食べる」
そして、彼はこう返す。
「ねぇ、私の話聞いてた?」
「二人の方が美味しいだろ。てか屋上寒いな」
私は数ヶ月前に、授業をサボっているところ彼と出会った。
名前は琉真(りゅうま)。
それ以外私は何も知らない。
けれど、何故か私は彼に懐かれて、それから授業をサボった時には何度か出くわした。
そしてここ1週間くらい、昼休み、屋上に彼が来るようになった。
彼に構わずお弁当を黙々と食べていると、手が伸びてきた。
「ちょっ「うまっ。これ自分で作ったのか」
「そうだけど」
「毎日食えたら幸せだな」
そんな無邪気な顔で言ったら許すしかないな、なんて思ってしまう。
「作ろうか?」
「いいのか?」
「あー、やっぱやめた」
「何で?」
「恋人じゃああるまいし」
私が作る必要も無い。
「恋人になればいいんじゃん?」
平然とそんなこと言うなんて…
「天然たらし…」
「何か言った?」
そう言いながら四角い箱を差し出した。
「何これ?」
「チョコ。今日バレンタインだろ」
逆チョコ…
思わず笑みがこぼれた。
「それで、花乃(かの)先輩、俺と付き合ってくれませんか」
「待って、私、琉真のこと名前しか知らない」
「え?マジ?」
「マジ。学年も知らないんだけど、先輩ってことは私の下なの?」
「うん。俺1年生。花乃2年生でしょ?」
「なんで知ってるの?」
「んー。好きだからかな」
「…何それ。あはは」
琉真は照れているのか、それとも寒いのか顔がほんのり赤くなっていて少し可愛いと思ってしまった。
「あ、笑った。笑った方がいいよ花乃は」
「あのさ、ちょっと考えてもいいかな?」
「もちろん。いつまでも待つ」
「ありがと。あともっと琉真のこと知りたい。知らないことが多すぎるから」
「おう。なんでも話すぞ」
そう言って琉真は嬉しそうに笑った。