窓の方を見ると空はもう茜色になっていた。

課題を解いていてそのまま、教室で1時間ほど寝てしまっていたらしい。



「あ。」



目の前には机に突っ伏している生徒会長の奈槻(なつき)先輩がいた。

なんでここにいるんだろう、寝ぼけながらもそう思った。


立ち上がって先輩の前へ行ってみると、
机の上には生徒会関係の資料が置いてあった。

それを渡しに来たのだろう。


それよりも、寝顔が気になった。
しゃがんで覗いてみるとかなり可愛かった。
そして何よりかっこいい。



「好きだなぁ…」



言うつもりはなかった。
だが、口からつい出てしまった。


私と同じく生徒会所属で親友の瑠璃香(るりか)も先輩が好きだ。
だけどまだ、私も先輩が好きなんだと伝えられていない。
好きなのに協力すると言ってしまった去年の自分、そして、今瑠璃香に報告できていない自分を殴ってやりたい。


聞かれていたら、と急に恥ずかしくなって教室から出ようとした。


その時ふいに腕を掴まれた。

そして甘ったるく低い声が聞こえた。



「真宮(まみや)。俺も好きだよ。」



奈槻先輩は、寝ていたとは思えないイタヅラっ子のような笑顔で顔を赤らめていた。



「…起きてたんですか」


「うん。真宮がここに来た時くらいから」


「私…先輩とはまだ付き合えません」


「どうして…?」


「瑠璃香に言ってないんです。まだ何も」


「あー、瑠璃、俺の事好きだもんね」


「え!知ってるんですか?」


「うん。見てればわかる。だってアイツとは幼馴染だし」


幼馴染か…。
すこし羨ましい。


「じゃあ、私のことも…」


「いや、真宮はわからなかったよ。だから、嬉しかった。まさか、真宮も俺を好きだとは思ってなかったから」


「あ、瑠璃香…」



後方のドアに瑠璃香が立っていた。



「ん?」


と机に突っ伏していた腕はそのままに先輩は後ろを振り返る。


「今の話…」


「聞いてたよ。恋(れん)もなっつのこと好きだったんだね」



瑠璃香は走って出ていってしまった。