田口まひろは放課後、教室に春木隆久(はるきたかひさ)を呼び出して、入ってくるやいなや、ネクタイを引っ張り、キスをした。



「春木先生。私先生が好きなんです。それだけです。付き合おうとかは考えてません。失礼します。」



一方的に話を切り上げその場を去ろうとした。



「田口さんっ!!」



春木は走って逃げようとしたまひろの腕を咄嗟に掴んだ。



「田口さん言い逃げは酷いですよ?」



春木はため息をついた。
そしていつになく怖い顔をしているようにもみえた。



「……すみません」


「田口さん。あなたという人は…。先生に、大人に、キスをして言い逃げですか?勝手にも程があります」



春木は間を開けて続けた。



「言うべきではないかもしれませんが、実は僕も、その、あなたが好きなんですよ。まひろさん。卒業まであと半年ですから、それから…その…付き合いませんか?」



普段ポーカーフェイスであまり表情を崩さない春木が顔を赤らめてそう言った。


一方、田口まひろはまさかの展開にはじめついていけなかったが、落ち着くと目に涙を浮かべながら言った。


もちろん「はい、喜んで」と。