ふと、思った。
そうか、
うん。フラン一人じゃないな。
さりげなく手助けしてくれたのは・・・
あぁ、そうか、
そりゃぁ『アロー』じゃ
出し抜かれるな。
「リュウ。ご苦労だった。
フランチェスコ王子の件はもうよい。
この件は 終了とする。」
「え?でも一応 追跡を続けていますが・・・」
「もう 大丈夫だ。
フランは、大丈夫。」
僕はにこり、と笑って
サントスに出かける旨を伝える。
もちろん。
魔導師 バームスの館だ。
*
「ふぉふぉ。遅かった
ですのぉ。」
「こんにちわ。バームス先生。」
急な訪問にもかかわらず、バームス先生は
快く招いてくれた。
王宮の目と鼻の先にある
バームス先生の屋敷は こじんまりとしてなんだか落ち着く。
どうぞ、と
椅子をすすめられて ゆったりと座る。
サントスが下がって部屋の壁沿いに立つ。
バームス先生は器用に茶を注ぐ。
「フランは、順調に
王都を出ましたよ。海辺の町に行くそうです。」
「ふぉ。ふぉ。ワシがすこーし 手を貸したこと
気づかれたのかい?」
「えぇ。立派な魔術が組み込まれた耳飾り。
あの、『アロー』が気が付かないほどの
気配の痕跡を残さない『靴』
バームス先生以外に 誰が作れるというのですか。」
呆れたように、わざとらしくいってみる。
気が付いたのはさっきだ というのは伏せておこう。
バームス先生は 目をキラリと光らせた。
ふふふ。相変わらず、だなぁ。
「それで?フランチェスコの捜索状況は?」
「そうじゃのぉ。
極秘情報だが 教えてやろう。
王子の魔力を追ったが、それは騎士タイラーが王子に与えた
魔力の紐を鳥が運んでいたそうじゃよ。」
「あぁ・・・・あぁ、なるほど。
真っ赤な 素敵な鳥だったでしょうね?」
「ふぉふぉ。お察しがいいのぉ。
王への手紙が見つかったから というのもそうじゃが、
騎士ビラットが施した『結界』を中から開けた形跡
自分で窓を開けた形跡 王宮の結界は「光の魔力」を使って
こじ開けられた形跡。そのあたりから「逃亡」と位置づけたようじゃな。」
バームス先生は楽しそうに
自前の白いひげを触った。
うん、極秘情報がどうしてバームス先生の耳に入っているのかは
追求せずに置こう。
「なぜ、手助けを?」
「・・・フラン王子を気に入ってるからじゃな。
面白いし、素直すぎるところがあるが・・・面白いしなぁ。
あと、ジゼはかわいい孫じゃ。
たまには、挫折を味わって 大きくなってほしいから、じゃな。」
にこっと笑う バームス先生に僕はぶるっと寒気を感じた。
面白いって二回言ったよ。
うん、絶対 敵に回したくないタイプ。
ジゼも振り回されているんだろうな、このおじぃちゃんに。
「あぁ、僕の影が『アロー』を からかいに行きましたので
ぜひ、フォローお願いします。」
「ふぉふぉふぉ。それは、楽しいのぉ
あぁ、王子付きの奴は「リュウ」でしたかの?」
「ふふ。よく御存じですね、先生。」
これも、割と機密情報なんだけどなぁ。
と思ったが 聞き流す。
「そうだ、
きっとおいしい酒が 送られ来るはずですので
僕からもおいしいつまみを用意しますよ。」
「ふぉふぉ。送られて来たら
ぜひ、お誘いしましょう。」
また、
楽しそうに、優しそうにバームス先生は笑った。


