*
****
彼は、ジゼディシアロー=バームス 二十代後半の少し切れ長の目が
近寄りがたい印象を与えるが
何処にでもいるような男。という言うのが第一印象であろう。
彼は伯爵家の長男だ。
世間では『魔力が不足しているから次男に家督を取られた』と思われているが
まったくの逆だ。
バームス家は、代々、兄弟の魔力の『弱いもの』が家督を継ぐ。
バームス家は代々『影』と呼ばれる
隠密、諜報の優秀な人材を輩出している
王国の『影』の支配者なのだ。
ちなみに、その『影』のトップが
引退したもと宮廷筆頭魔導師・・・
『バームス先生』こと、フランチェスコ王子の
魔法の先生なのだ。
それを知るのは 一部の高位貴族と王族だけだ。
で、その諜報部隊の次の筆頭に一番近いのが
彼の孫である「ジゼディシアロー」である。
*
「はぁ?」
「だから、おぬし、フランチェスコ第二王子に着け。」
「何言ってるんでしょうか?くそじいぃ。」
「口が悪いのぉ。ジゼ。
王子の『影』として『側近』になれ、ということじゃよ。」
「ついに、ボケたんだな。・・・。」
「相変わらず、失礼なやつだの。」
ふぉ、ふぉっ と楽しそうに バームス先生が笑う。
ジゼは「はぁ。」とため息をはいて
頭に巻いた布を ぱらり、ととる。
薄い緑色と少し濃い藍の混ざった髪。
少し鋭い瞳。どことなく、バームス先生と似ている。
「・・・おい。ボケじじぃ。
どうせ、決定事項なんだろ。暗部にはもう届けたのか?」
「ほれ、書類も作成済みじゃよ。」
「くそっ。じじぃの癖に 仕事、はやいな。
くっそ。マジで完璧な書類だし、てめぇ、王のサインまで・・・
逃げ道が無いじゃぇーか。」
「ふぉふぉ。あたりまえじゃ。ガラムも快くお前の人事異動を受け入れてくれたぞい。」
ガラムは今の諜報部隊のトップ。ジゼの上司だ。
ぱらり、と書類を見ると
今 ジゼがやっている 潜入捜査も後輩が引き継いでいるし
ジゼが『諜報部隊』にいたこと自体が
うっすらと誤魔化されている。
おいおい・・・
『文官』ってことになっているな。
ぜってぇ、脅しているな。
しかし・・こうやってきっちり 手をまわして
選択肢を一つか残さないやり口は、相変わらずだな。じじぃ。
「はぁ。・・・じゃぁ話を聞こう。
どーせ、オレには選択肢はないんだろぉ?じじぃ。」
そういってため息をつくと
じじぃは 白いひげをなでて ふぉふぉ と笑った。
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彼は、ジゼディシアロー=バームス 二十代後半の少し切れ長の目が
近寄りがたい印象を与えるが
何処にでもいるような男。という言うのが第一印象であろう。
彼は伯爵家の長男だ。
世間では『魔力が不足しているから次男に家督を取られた』と思われているが
まったくの逆だ。
バームス家は、代々、兄弟の魔力の『弱いもの』が家督を継ぐ。
バームス家は代々『影』と呼ばれる
隠密、諜報の優秀な人材を輩出している
王国の『影』の支配者なのだ。
ちなみに、その『影』のトップが
引退したもと宮廷筆頭魔導師・・・
『バームス先生』こと、フランチェスコ王子の
魔法の先生なのだ。
それを知るのは 一部の高位貴族と王族だけだ。
で、その諜報部隊の次の筆頭に一番近いのが
彼の孫である「ジゼディシアロー」である。
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「はぁ?」
「だから、おぬし、フランチェスコ第二王子に着け。」
「何言ってるんでしょうか?くそじいぃ。」
「口が悪いのぉ。ジゼ。
王子の『影』として『側近』になれ、ということじゃよ。」
「ついに、ボケたんだな。・・・。」
「相変わらず、失礼なやつだの。」
ふぉ、ふぉっ と楽しそうに バームス先生が笑う。
ジゼは「はぁ。」とため息をはいて
頭に巻いた布を ぱらり、ととる。
薄い緑色と少し濃い藍の混ざった髪。
少し鋭い瞳。どことなく、バームス先生と似ている。
「・・・おい。ボケじじぃ。
どうせ、決定事項なんだろ。暗部にはもう届けたのか?」
「ほれ、書類も作成済みじゃよ。」
「くそっ。じじぃの癖に 仕事、はやいな。
くっそ。マジで完璧な書類だし、てめぇ、王のサインまで・・・
逃げ道が無いじゃぇーか。」
「ふぉふぉ。あたりまえじゃ。ガラムも快くお前の人事異動を受け入れてくれたぞい。」
ガラムは今の諜報部隊のトップ。ジゼの上司だ。
ぱらり、と書類を見ると
今 ジゼがやっている 潜入捜査も後輩が引き継いでいるし
ジゼが『諜報部隊』にいたこと自体が
うっすらと誤魔化されている。
おいおい・・・
『文官』ってことになっているな。
ぜってぇ、脅しているな。
しかし・・こうやってきっちり 手をまわして
選択肢を一つか残さないやり口は、相変わらずだな。じじぃ。
「はぁ。・・・じゃぁ話を聞こう。
どーせ、オレには選択肢はないんだろぉ?じじぃ。」
そういってため息をつくと
じじぃは 白いひげをなでて ふぉふぉ と笑った。


