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彼は、ジゼディシアロー=バームス 二十代後半の少し切れ長の目が
近寄りがたい印象を与えるが
何処にでもいるような男。という言うのが第一印象であろう。

彼は伯爵家の長男だ。
世間では『魔力が不足しているから次男に家督を取られた』と思われているが
まったくの逆だ。
バームス家は、代々、兄弟の魔力の『弱いもの』が家督を継ぐ。

バームス家は代々『影』と呼ばれる
隠密、諜報の優秀な人材を輩出している
王国の『影』の支配者なのだ。

ちなみに、その『影』のトップが
引退したもと宮廷筆頭魔導師・・・
『バームス先生』こと、フランチェスコ王子の
魔法の先生なのだ。

それを知るのは 一部の高位貴族と王族だけだ。

で、その諜報部隊の次の筆頭に一番近いのが
彼の孫である「ジゼディシアロー」である。







「はぁ?」
「だから、おぬし、フランチェスコ第二王子に着け。」

「何言ってるんでしょうか?くそじいぃ。」
「口が悪いのぉ。ジゼ。
 王子の『影』として『側近』になれ、ということじゃよ。」

「ついに、ボケたんだな。・・・。」
「相変わらず、失礼なやつだの。」

ふぉ、ふぉっ と楽しそうに バームス先生が笑う。
ジゼは「はぁ。」とため息をはいて
頭に巻いた布を ぱらり、ととる。

薄い緑色と少し濃い藍の混ざった髪。
少し鋭い瞳。どことなく、バームス先生と似ている。

「・・・おい。ボケじじぃ。
 どうせ、決定事項なんだろ。暗部にはもう届けたのか?」
「ほれ、書類も作成済みじゃよ。」

「くそっ。じじぃの癖に 仕事、はやいな。
 くっそ。マジで完璧な書類だし、てめぇ、王のサインまで・・・
 逃げ道が無いじゃぇーか。」
「ふぉふぉ。あたりまえじゃ。ガラムも快くお前の人事異動を受け入れてくれたぞい。」

ガラムは今の諜報部隊のトップ。ジゼの上司だ。
ぱらり、と書類を見ると
今 ジゼがやっている 潜入捜査も後輩が引き継いでいるし
ジゼが『諜報部隊』にいたこと自体が
うっすらと誤魔化されている。

おいおい・・・
『文官』ってことになっているな。


ぜってぇ、脅しているな。
しかし・・こうやってきっちり 手をまわして
選択肢を一つか残さないやり口は、相変わらずだな。じじぃ。

「はぁ。・・・じゃぁ話を聞こう。
 どーせ、オレには選択肢はないんだろぉ?じじぃ。」

そういってため息をつくと
じじぃは 白いひげをなでて ふぉふぉ と笑った。