すっ と、目の前にタイミングよく
お茶を置かれる。

静かに 三つ。
きがきくなぁ、と見上げると
セーラとリィアだった。


「どうぞ、フランチェスコ様。」
「ん・・あぁ、セーラ。ありがとう。」

「ありがとう。」
「ど、どうもっ。」

セリィとラディも受け取る。

今日のお茶は、あぁ、ハーブティかぁ。
独特の香りが鼻につく。
・・・薬草学のウルーチェ先生が丹精こめて育てたハーブだから
大きな声では言えませんが、苦手だ。

一口飲んで、そっとソーサーにカップを戻したところで
「フラン。」
「アレク兄様。」

珍しく、兄に呼ばれた。



失礼、といって お茶会の会場を少し外れて
あいている部屋へとアレク兄様に案内される。

部屋の中に入る前に、
アレク兄様が ついている警備騎士に
「私は、弟であるフランチェスコと話があるんだ。入るな。」
「フランの騎士たちも 扉の外で待て。」
「っ、しかし・・・」

騎士ビラットが反論しようとするが、
すぐに、兄の騎士に止められて はい。と小さくうなずく。

「フラン、入れ。」
「はい。アレク兄様。」

ぱたん、と 扉を閉じると
きゅぃいん。と結界が張られる。

「ははは。なかなか、慕われてるなぁ。フラン。」
「何言ってるの。アレク兄様の騎士も 過保護でしょ?
 これ、騎士ビラットの結界魔法だけど、
 上書きするように兄さんの騎士の反射魔法と・・・なんだ?毒?」

怖ぇ~ これで 侵入したら即死レベルだよな。
笑ってしまうくらいの防護壁。

「そうなんだよなぁ。今日はサントスが不在だから
 余計 騎士の二人はピリピリしちゃって。」
「ははは。ウケる。
 んーー?で? わざわざ 俺を呼び出したわけは?」

俺は、紙を取り出して 防音の魔法陣を書く。
魔力を流して展開。

「お。使えるようになったかぁ。フラン」
「まーねぇ。兄様には及ばないし、魔力が いまだに安定しなくて
 空中にかけないんだよね。おかげで 紙とペンは必須だなー。」

「そこで、コレ どうおもう?」

アレク兄様は 空間に自分の魔力を流して『魔法陣』を書き始めた。

ん?は、ハト?鳩は、ハトだよな?
ぽっぽーの?

中央に 鳩とかいて、二重の円の所には、
『黒・召喚者に従う』と書かれる。
わーお。 なにこれ。

思い切り顔をしかめた俺に アレク兄様は面白ろそうに、笑った。
「なぁ、どう思う?フラン。」
「えー、言っていいの?」

「うん。遠慮なく。」
「じゃぁ、「黒」じゃなくて、「白」がいいと思う。」

鳩、といえば白でしょ。
あれ?青とか灰色とかが一般的だっけ?
でも、なぁ、平和の白 じゃねぇ?どうせ出すなら。

「でもさぁ、なんで アレク兄様『鳩』なんて呼び出すの?
 そっち系なら、鷹とかのほうが 強そうじゃな?
 どうせなら、カラスとかのほうが いいんじゃない?色的に。」
「ふ。ふふふ。 
 相変わらずだなぁ、フラン。」

「なにが?」

はてな?

「何の召喚陣かわからなかったんだよ。「鳩」とはなぁ。」
「えぇ・・・だって 書いてあるじゃん。」

声が小さくなる。
兄様は苦笑する。

「お前だけだよ。魔法陣の模様を『文字』としてとらえるのは。」
「そうか?」

「それでな、この陣の文様を あっさり読んだ子がいたんだよ。」
「へぇ。珍しい。」

俺だけだと思ってたよ。
兄様には読めることを内緒にしとけって言われたから、内緒にしてるけど
王宮の魔術師ではトップシークレットで魔法陣の解読をしてるらしい。

「読めたのは、レストン家の令嬢だよ。
 ソフィア って名前だったかな。」

その名前に ぴたり、と 動きを止める。
え?
ソフィアって・・・あの あわいブルーの髪の
作ったような綺麗な笑顔を思い出す。

「僕の髪が黒いのに、躊躇せず近づいてきたんだ。
 この魔法陣を展開しているときに、だよ?
 ちなみに、フランと同じ「白がいいんじゃないかしら?」と言われたよ。」
「え?」

がっつり読めてるじゃん。