とりあえず、
部屋の前で待っていた騎士を一瞥して
「いくよ。」
と だけ告げて、歩き出す。


講師が待っている部屋へと 向かう。
えぇと、あそこだな。

いろんな記憶がなだれ込んで 少し 落ち着く時間がほしいが・・・。


ちらり、と 後ろの騎士を見る。

・・・よ、よかった。
俺の変化には気が付いていないだろう。

記憶での、「俺」は『超わがまま』って訳でもないけど
やる気がないっていうか、ちょっとぼーっとしてるというか
にこにこ 笑っているけど覇気がないというか。


言い訳させてもらうが、
ずっと『違和感』があったんだよ!

なんで 太陽は二つなのかなとか
スマホがあれば すぐに 母上に連絡できるのにとか、
小さな違和感があって、頭がぼんやりしてたんだよ。

やる気がないっていう訳じゃなくて
俺が「フランチェスコ」に馴染んでなかったっていうのが正しいかな。
今、オレが俺で 俺はフランチェスコって気が付いたっていうか。



第一王子の兄がいるが
その兄が『優秀』なんだよな。

ってか、
今なら、「わかる」な。

今の勢力は兄の第一王子派と 俺、第二王子派がいて
どちらが次の『王』になるか
後継者争いってやつがあるんだよなー。

そういや、侍女にも「次の王になるのはあなたですから!」とか
「第一王子にまけないように」とか
よく言われて・・・

え?もしかして、兄弟仲が悪いのか?
ぶわっと背中に汗をかく。
俺、そんな意識ないけど 兄様に嫌われてたり・・・する?

もう、なんだよこれ。

生まれかわったと思ったら、
こんな、策略とか 腹芸は 苦手なんだよ。



苦手、とかそういうの 言ってる場合じゃないよな。

あぁ、でも・・・
俺の中の「フランチェスコ」の記憶の中では アレッサンド兄様は
何でもできて すごい 大好きな兄、なんだけどな。
嫌がらせをされた記憶もないし・・・

ただ、何でも兄と比べられて ちょっといじけているが
基本 優しい兄は嫌いじゃない。


でも、俺 うまく立ち回らなきゃ、
兄弟で 後継者争いなんて 絶対にごめんだ。

どこかの時代劇じゃぁあるまいし。
よくあるよなぁ。この手の話。
織田信長だって弟に殺されそうだったしな。


あぁ、めんどくせーなぁ。

今から「王になる気はない」って宣言しなきゃ。