サーフェスは、
騎士総長、つまり宮廷騎士団のトップだった。

今は引退して
後輩の育成や、学園や施設での教育や指導
そういったモノに力を入れている。

フランチェスコ王子の剣の鍛錬もその一環だ。



**


カン、カーーン


鈍い 木剣の音が響く。


お、今の動きは
マーカーがよかったな。

フランチェス子王子がもう少し、動きを予測して・・・

ガキィィン

剣がはじかれる。
あぁ、勝負がついたな。

「うわっ。」
「・・・ふーっ。」
「く、くそぉ。また、負けた・・・」
「フランチェスコ様、また、勝ちました。」

「くそっ。」

フランチェスコ王子は一瞬、悔しそうにマーカーをにらんでから、
すぐに、にぱっと 笑顔を向ける。
よく見かける「王子様スマイル」じゃない、
ちょっと恥ずかしそうな、子供っぽい笑顔。

たぶん、これが本当の王子なんだろうなぁ。

サーフェスはそんなことを思いながら
二人をにやにやと、眺める。


「じゃ、もう一度するか?二人とも。」
「「はい。」」

「じゃぁ、今度は 体術!
 お互い、気を付けろよ。始め!」
「「はいっ」」

楽しそうだな。
二人は 向かい合って、試合を開始した。

それにしても、
フランチェスコ王子の才能には驚かされる。
あのマーカーに「強化魔法」や「防御魔法」なしで
戦ってるんだぜ。

もちろん、
マーカーは身体強化魔法を使っているし
木剣にも 魔力を通している。
言っておくが、それが、普通だ。
逆に、魔術で体を保護しておくと怪我も少ないし
要領よく体が鍛えられる。

もともと、フランチェスコ王子は
剣や体術などの体を動かすのがお好きなようだ。
簡単な技や術はすぐに使いこなせた。
フランチェスコ王子は、
マーカーに勝てないことを悔しがっていたが
逆に 「魔術」を纏うことなく、
あそこまでマーカーにやりあえること自体がすごいんだよな。

通常、騎士でも剣に魔法を通したり、
体に魔力を循環させて
練習する。
それで、魔法と剣と両方使える「騎士」となる。

しかし、王族は違う。

いつ、なんどき どんな状態で襲われるか というのを想定して
体術や剣を習うとき、まずは『生身』の状態で
しっかりと学ぶのだ。

自分の魔術が使えない「結界」や磁場のところで
敵と遭遇しても戦えるように。