「こほん。まぁ、とにかく僕はその契約はいらない。
専属だというなら、言葉の誓いだけで十分だ。
まぁ、いつもとそんなに変わらないだろ。
そんな魔法での契約がなくても、僕を裏切らない、だろ?」
にこっと、
フランチェスコ王子は騎士ビラットに笑いかける。
うわ。
魔法契約よりも、厄介な王子のあどけない笑顔っす。
この笑顔の前では
絶対裏切られないな。
ねぇ?ビラット様?
ちらり、と騎士タイラーが騎士ビラットを見ると、
ちょっと悩むように手を2度ほど空に掲げる。
気持ちはわかります。
騎士ビラットはあきらめたように はい。
と小さくうなずいて
今まで展開していた魔法陣と魔力を解放した。
「・・・騎士の祈りを、忠誠を、
フランチェスコ王子に。」
騎士の祈りの術は解かれたものの、忠誠を誓う。
空気中に一瞬かれの赤い魔力が散る。
「・・・騎士ビラット。
綺麗な魔力だな。」
「恐れ入ります。」
そういって、
騎士ビラットは微笑んだ。
「もう一度いうけど!
あの「騎士の祈り」ってやつ、
もう、誰にもやるなよ?
あ、騎士フィロスも。 まぁどうしてもっていうならいいけどさ・・・
自分の信念をささげる人を見極めろよ?」
「はい。」とつぶやいた騎士フィロスがちょっと悲しそうに笑ったのは
誰にも気が付かれていない。
フランチェスコ王子は、
ふぅと、ため息をつきながら僕をみた。
「騎士タイラー、お前もだぞ?
むやみに信念をぶつけるなよ?」
え?
王子・・・俺の名前、憶えて・・・
「は、はいっ」
ちょっと声が上ずったのは内緒だし、
まさか覚えているなんて。
騎士タイラーは、単なる補助の護衛騎士だ。
フランチェスコ王子の護衛騎士はビラット様とフィロス様であるから、
たまに、手が足りない時に役目を変わるだけで・・・
覚えられていたとは。
やべぇ、ちょと、そーとー、うれしいかもしれん。
ちなみに、
「騎士の祈り」を拒否するとは思わなくて
驚いたのも内緒だ。
上級貴族連中は
よく、騎士の祈りをささげろ。とか言って
契約してるからな。


