コンコン。
二度のノックの後「フランチェスコ様」
声をかけられる。
こほん、と俺は息を整えてから
「良いぞ。」
と、返事を返す。
ぎぃ、と扉が開けられて
軽く頭を下げて リィアが入ってくる。
前世の24歳の記憶が混じっている今じゃぁ、
リィアがなかなかの美人だったんだなぁと思う。
きっちりと シャツのボタンをしめてるけど、
スタイルだって悪くない。
ってか、きっちりまとめられた髪とかうなじとか
うん。セクシーだよな。
10歳のガキには
口うるさいおばさん、って思ってて申し訳ない。
「・・・フランチェスコ様。
お加減は・・」
「あぁ、心配ない・・・」
言いかけて、ふと、気が付いた。
俺、第二王子なんだよな。
俺、10歳なんだよな。
あぁ、そうだ。
いきなり態度がかわったら
皆 気にするよな・・・。
最悪 医者や魔術師まで呼ばれて
大騒動になる・・・。
まぁ、何時もと同じ態度をって言っても
一気に成人男性の記憶が流れ込んだ今となっては
どれが正しい態度か、わからない・・・
「っ・・・もぉ。疲れたな。
サーチェスが僕の 剣をはじいたときに
ぶつかったかもっ。鍛錬は嫌いだな。」
「まぁまぁ、フランチェスコ様・・・
そのように言ってはいけませんよ!
あなたはいずれ、この国をしょって立つ「王」になる方なのですから!」
少し困ったように、彼女は笑って さぁ、さぁ、と紅茶をワゴンで運んでくる。
ふんわり 紅茶のいい匂いが漂う。
「今日は、もう疲れちゃったな~」
こてん、と 顔を傾ける。
どうだ? ちょっと「かわいい」感じのしぐさだぞ?
は、恥ずかしい。
でも仕方ないじゃないか、王子 といっても、
さっきまで普通の10歳児だっただ。
これくらい、普通の・・・わがままだし
こんなもんかな?十歳児。
「ほら、お気に入りのお菓子もありますからね?
がんばって、お勉強しましょうね?」
おぉ。いい感じだったみたいだ。
リィアはにこにこ笑いながら、茶菓子をカウンターに乗せた。
「うん。がんばる。」
にこり、と 意識して笑う。
「まぁ。フランチェスコ様。さすが、素敵な笑顔ですわ。」
お、おう。
そうか。ちょっと リィア 俺に甘すぎないか?
そんなことを思いながら 紅茶を一口飲んだ。


