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結果、
どうなったかというと、
婚約破棄、出来ませんでしたーー。
って、おぉおおーいぃ!!
俺はちゃんと
父に話をきっちり通したんだけど、
意外や意外、
モンレ公爵がどうしても「フランチェスコ王子」に
娘を嫁がしたいんだと。
えーー。
なんだよ。
そーゆーとこで 娘に甘いなー。
さんざん俺、嫌われるように生意気に意見したのに。
無駄にモンレ公爵に
睨まれただけかよ。
今思い出してもこえーよ。
モンレ公爵も、こんなくそ生意気で
無能な第二王子なんて見切ってくれよ。
結局、保留された小さな婚約者は、『婚約者候補』に
格下げにはなったが
その中でも、第一候補ってことになったらしい。
えーーー
なに、その、無理やり感。
でも、毎月 義務化されていた二人っきりのお茶はなくなるし
王族の『王妃教育』も、
簡素化されるらしい。
「王子。」
「なに?騎士ビラット。」
今日は、薬学の授業のため中庭にでる廊下にいた。
彼から話しかけられるのは珍しい。
今日の警護は彼だけだ。
珍しいな。中庭に出るときは
大抵はあのピンク髪の騎士フィロスなのに。
開放的なところが好きなんですって言ってたな。
フィロスの ふんにゃり とした締まりのない笑顔を思い出す。
中庭はもともと5重の結界が張られてるからな。
勉強している部屋より 安全らしい。外だけど。
「フランチェスコ王子を、操ろうとたくらんでいる奴らが捕まりました。」
「・・・」
は??
あまりの衝撃で言葉も出ないし、
顔の表情筋が死んだ。
冷静に受け止めている!?ちゃうちゃう。衝撃のあまり言葉が出ないだけ。
「そ、うか。」
やべーって、俺。操ろうってなに?操作系の魔法とかか?
第二王子を利用するってやつかー本当にあるんだなぁ、そーゆーの。
うん。気を付けよう。ってか
ビラットとかきっと優秀なんだろうなー、
だから俺が気を付けなくても大丈夫だろ。うん、そーゆーことにしておこう!
「失礼ながら、私の「火の守護」の術も中庭に出る前に
かけさせていただいても?」
「・・・ん。あぁ、構わないが・・・」
ちなみに、
俺には守りの術がかかっている。
毎朝、王宮付の魔術師がかけに来る。さすが「王子様」だろ?
オートバリアーみたいな感じらしいが
ありがたいことに 一度も発動はしてないがな。
視界が一瞬赤色に染まる。騎士ビラットの魔力だろう。
包まれてから 頭に吸い込まれるのがわかる。
中庭の5重結界に 王宮魔術師の守りの術。
そして警護騎士からの守りの術。
「・・・・過保護、だな。」
「やりすぎということはありません。
フランチェスコ王子の代わりはありませんから。」
「ふーん。
まぁ、無理するなよ。
えぇっと、ちょっと待て。」
手に持っていたノートの切れはしに、
持っていた鉛筆のような筆記用具で
ぐるり、と二重丸をかいて、真ん中に
『守』と記入。二重丸の間には『悪意を対等にはじく』と書いた。
あんまり書きすぎると俺の、魔法では発動しないかもしれないしな。
「騎士ビラット、ちょっとしゃがめ。」
「はっ。」
ビラットは緊張した面持ちで膝をつく。
えぇっと、魔力の球を作る要領で書いた円や文字に魔力を通す。
流れる水のイメージ・・・だったな。
ぺたっと彼の頭にその魔法陣を書いた紙を押し付けながら俺の魔力を流す。
ふわぁぁあ、と一瞬白い光が 騎士ビラットを包んで
魔法陣がふわり、と消えて
まっしろな紙だけが残った。よし、成功だ。
「うん。これで良し。」
「お、王子、今のは、王子の・・・守りの・・」
「そうだ。
やっとこの、魔法陣を少しずつ使えるようになってきたんだ。
ま、練習中だから精度はよくないかもしれないが
ないよりはましだろう?僕を守るのは『仕事』だが
騎士ビラットが先にやられてしまったら、守ってくれる人がいないからな。」
成功してよかった。
ちょうど、おととい、魔術の授業でこの魔法陣の魔力の流し方
ってのを習ったんだよな。
まだ、魔力が安定してないから文字に書いてしか魔法発動できないけど、
あとは、筆記用具がなくても魔力だけでかけるようになりたいなぁ。
中庭にでた。
いい天気だ。
「ほら、騎士ビラット。
今日は空もきれいだし
薬草も 花も 綺麗に整えられている。
あんまり、警護対象ばっかり見てないでちょっとは
周りをみろよなー。」
気を楽にしろって。
それが仕事だからしょうがないけどさ、
俺は、にこり、と笑って もうすでに来て
薬草の畑のほうに立っている、薬学の先生の所に駆け寄った。


