にこ。
っと俺の中で大好評の「王子様スマイル」を
顔に浮かべる。
出来るだけ、優しい声を出すように意識をする。
「モンレ公爵。
セリィは「この顔」が好きなんです。
優しい言葉、をかけられるのが好きなんです。
第二王子である、僕を気に入っているんです。」
丁寧に言ってみる。モンレ公爵が黙る。
当たり前だろ、って感じに眉間にしわを寄せる。
いや、そうなんだけどさ。
「公爵・・・
顔が好きなら、僕より優秀な有望な男の顔を「魔術」で
変えるなりすればいい。
王子という立場がほしいのであれば、
隣国の王子を紹介しよう。あぁ、でも
隣国の事情もありますので婚約者として認められるか解らんが。」
「・・・なぜ、
セリィでは・・・王子に、気に入られませんでしたか?」
うわ、マジで視線で殺されるよ。
普通の子供だったらまじで号泣だよ。
俺が普通じゃなくてよかったよ。マジで。
「・・・まぁ、そうだな。」
びしぃぃ!!空気が変わる。
お、おこってるよーー!
「・・・そうですか。
お忙しい中、ありがとうございました。」
「あぁ。公爵・・・セリィは『いい令嬢』だ。
上流階級の世界ではばたいて輝く・・・。
ぜひ、素敵な婚約者を新しく見つけてくれ。」
ほんと、頼むよ。
本当に嫌いじゃないんだよ、セリィ。
幼い笑顔を思い出す。
でも、今、俺ここで「第二王子」で生きることを受け入れたら
絶対に後悔するしな。、
なにより「魔法と冒険」の世界だぜ!
あちこち、見たい。
モンレ公爵は深く頭を下げる。
騎士がドアを軽く開ける。
外にはリィアが待っていた。
紅茶をだすタイミングを見てたが部屋に入れなかったようだ。
申し訳ないなぁ。
「・・・フラン様。」
見送ったタイミングでリィアがお茶のワゴンを押して入ってくる。
すっとお茶を差し出されて
歴史の教科書をそっとどかす。
「・・・ありがとう。」
「セリィローズ様と、婚約破棄なさるのですか?」
「ふふ。踏み入るねぇ。」
「・・・申し訳ございません。
でも、あんなにお二人とも仲がよろしくて・・・その、お似合いでしたし。」
「うん。
セリィはかわいいし、素直だし
素敵な女性、だったよ?」
「なら、なぜ・・・?」
その問いに、少し、考える。
「たとえば・・・の話だが。
フランチェスコ王子がただの、フランになったとき
彼女は、僕の隣には立てないだろうな。
まぁ、そんなところに立たす気がないっていうのが正しいかな。」
ほんと、
彼女には一般市民の暮らしの想像がつかない。
俺だけだったら、野宿とかで全然オッケーなんだけどさぁ。
って、出来るかな。
まぁ、男だしどうにかなるだろう。
「フラン様・・・。」
「いや、そんな悲しい顔しないで。
あぁ、リィアのお世話になっているおじはモンレ公爵の者だったね・・」
悪いことしたなぁ。
「いえ、そういったことは関係ありません!
フラン様、お嫌いでなければセリィローズ様をそのまま婚約者としてても
良いのでは・・・?」
「ふふ。あまり、長く
この、『無能な第二王子の婚約者』をしてたら・・・セリィが
次が見つけられないだろう?」
「でも、セリィ様を・・・お好き、なんでしょう?」
まぁ、嫌いじゃない。っていうか
好きだな。恋愛感情と呼ぶにはまだ未熟だけど。
というか、
俺がまだ幼い感情に揺さぶられて
『恋心』を育てきれていないだけ・・・かもなぁ。
でも、この判断を後悔することは、ないと思う。
セリィには笑ってほしいし。
「ふふ。リィア。
王族は、好き、嫌い、を言ってはいけないんだろ?」
マナーで習った言葉を告げて
誤魔化しておこう。
ってか、婚約解消ってどうやるのかな。
父の所にとりあえずいくか。
リィアの入れてくれた 甘めのお茶をぐいっと飲み干した。
歴史書がいくつか机のそばのチェストに置かれている。
ってか、重いんだよな~。
特に、この歴史の本ってのが重くて埃っぽい。
でも、一応 今日の分を
自主学習でもしないとついていけないしな。
ぱらり、と一つ本を取ってめくる。げっ。
何かわからん虫の死骸っ!!
あわてて、ぱたぱた、と本をめくってつぶやく。
「・・・・はぁ。
ホコリも虫も、一気に掃除できればいいのに・・」
俺の魔法って「光」なんだろ?
クリーンとか、洗浄みたいな、魔法使えないのかな?
こんど、魔術の時間に聞いてみるか。


