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ロックパティのひとりごと 中
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おいで、と
ロックパティは隣に座っていたユリカに声をかけて
引き寄せてひざに乗せる。
ちなみに、彼女は絶賛 不機嫌中だ。
お気に入りのおもちゃを取り上げられたからだろう。
「もう。せっかく、
そばに置くと「楽」だったのに!!」
ぷぅ、と拗ねてみせる。
その様子に騎士さま達はすこし苦笑して
姿勢を直して、椅子の後ろに立つ。
紅茶を進めたがそもそも座る気はないようで、
側近である男がしかめっ面で、ウルーチェ様の隣に座る。
まぁ、王子に向かって
その言い方は ないよなぁ。
でも、そこが 彼女のいいところだし。
理由にものすごく納得するなぁ。
とロックパティは 無意識にうなずく。
彼女は「妖精族」のハーフであるため
この地では空気が濁っているのだ。
聖魔力を持っている『冒険者チェース』こと、フランチェスコ第二王子の側は常に浄化と似た作用があるから心地よかっただろう。
ロックパティは
ひょい、と彼女を持ち上げる。
少しだけ、光の術を展開しながら。
「・・・ご領主さまも 光の術をお使いになられるのですね。
さすが・・・シャボンワーク家でございますね。」
ウルーチェ様とさっきまで言い争っていた
側近の男が 軽く、うなづきながらソファに腰かける。
薄いグリーンに藍色がメッシュのように混ざっている。
そもそも、シャボンワーク家も光の術使いを多く輩出している名家だ。
シャボンワークの花を育てそれを守り
街を皆を守る盾にする。
その花を育てるのに 光の術が役立つ。
それを増幅させる「増幅の陣」も優れているのは有名な話である。
「それで?」
ロックパティはユリカの髪をなでながら
すこし、厳しい視線を彼らに向ける。
ウルーチェ様は ふふ。と 楽しそうだ。
「・・・このたびは、
祭りを中断させ・・・」
「いやいや、それは
騎士が飛んできて 手を振った演出にしか見えないので
問題はございません。
むしろ、盛り上がりました。ありがとうございます。」
こほん、と軽く咳払いをする。
「そのことではなく、
彼・・・えぇと、チェース でよろしいでしょうか?
それとも、フランチェスコ殿下?」
「・・・冒険者チェース、で構いません。」
「はい。では、
冒険者チェースは私の家族であるジョイルとともに旅立ちました。
それで、ジョイルは罪に問われるのでしょうか?」
「・・・そ、それは、
ないかと・・・」
心もとない返事である。
ロックパティはわざとらしく ふぅ。とため息をつきながら
ウルーチェ様を見る。
「ふふふ。無いよ。
彼が、罪に問われることはない。
彼が、第二王子の逃亡を手助けしたという事実はない。
賢者ウルーチェの名において 確実に 誓う。」
妖艶にウルーチェが 笑う。
一瞬、きらり、と赤い輝きが見えたから
何かしらの『術』を使ったのであろう。
その様子をみて、また 側近の彼は苦々しくウルーチェを睨みつけるのであった。


