*
ちょっと小話
*
俺はランチャー
海辺の近くの冒険者ギルドに併設された店の料理長兼店長だ。
そうだなぁ。
はじめは あぁ、世間知らずのどっかの坊ちゃんが家出してきたんだろうな。と思ってたさ。実際身なりもよかったし、身のこなしがその辺の野蛮なやつらとは違う。
「-----で、はい。これで登録完了。
頑張ってね。新人冒険者さん。」
「はい。ありがとうございます。」
見慣れた登録光景だった。
ああ、新人か、と 思ったが
茶色の髪で 何処にでもいるような少年だった。
依頼ボードの前で難なく文字を呼んでいるようだし
教養もありそうだから
食堂で雇っても、いいかな
と思って 軽い気持ちで声をかけたんだった。
ちょうど、給仕が退職してたから、
ギルドで求人募集 かけようかと思ってたし。
「え?マジっすか。
助かります!宿と仕事 すぐにゲットて
俺、マジついてるっ。」
にっこりと 笑うと、なかなか 愛嬌があるじゃないか。
よし!気に入った!
「おう!よろしくな 冒険者チェース!」
*
チェースはよく働いた。
出身はやっぱり 貴族らしい。
そこん所は詳しくは突っ込まねぇが
兄にすべて押し付けて 逃げてきた。っていうから
お家騒動だろうな。面戸くせぇな、貴族って。
チェースは貴族にしては珍しく 普通の茶色の髪だからな。
魔力も そこそこしかないんだろうな。
俺らからしたら十分だか 貴族の世界では無理だろうな。
貴族ってやつは魔力がすべて らしいからな。
たまに来る「騎士」のダイナラスも 王宮騎士まで上り詰めたが身内の失敗とその後始末でこの町にとどまっているって言ってるしな。魔力が多いだけでもダメ。
やっぱり貴族ってやつは面倒そうだ。
逃げてきた!なんて言ってるチェースだか、
実に楽しそうに仕事を来ないしている。愛嬌と元気さは
周りを幸せにするな。
冒険者としての実力も少しずつ上がっていけばいいが。
そう思った矢先だった。
依頼先からチェースはいなくなって
戻ってこないことを知らされたのは。
*
「え?なんだって?」
「ですから、冒険者チェースから、別れの言霊です。
ききますか?」
赤いフードをかぶった女がきたときは
戸惑った。
なにがあったんだ?
単なる領主のお嬢さんの同行者の仕事じゃないかったのか?
焦る気持ちを抑えて、
店の連中と 見ることにする。
女は 魔法具を出して、
何やら唱える。
ぶおん。と チェースが浮かび上がり
『えーーっと、 俺は・・・旅立ちます。』
と困ったように、恥ずかしそうに笑っていた。
『ありがとう。
お世話になりました。・・・えぇと、
これって 『言霊』の魔法 出来る?
わかんない?まぁ、やってみるよ。』
『・・・こほん。
”悪きものを避けよ この先の幸福を願う”
えぇっと、成功したかなー?』
きらり、と空気が光った気がする。
にこり、と 見慣れた愛嬌のある笑顔で
チェースは『じゃ、またね!』といって 映像は途切れた。
「・・・というわけじゃ。
チェースによくしてもらって 私からも感謝を述べよう。」
そういって 赤いフードの女は 妖艶に微笑んだ。
店をでると、たぶん ありゃ、騎士だろうな
という感じの立派な腕章を付けた 男どもが
赤いフードの女に近づく。大丈夫か?
と思ったが、赤いフードの女は どうでもいいように
男どもをあしらった。
「ウルーチェ様!!」
「うるさいのぉ。」
「ですから、彼はどこに!!」
やいやい言いながら 女は隣のギルドに入っていった。
きっとさっきのメッセージを見せるためだろう。
あー どこぞの貴族の三男ぐらいか と思っていたが
意外と身分も高かったみたいだなぁ。チェース。
ま、また そのうち遊びに来るだろ。
そう思って、俺はいつものように仕事をするだけだった。
「ほら、持ち場にもどれーー。」
でも、彼らは知らない。
チェースの魔法によって 聖なる守りにも似た
「光の加護」がこの店にかかったことを。
小さな清めと癒しが この空間にできたことを。
そのうち パワースポットとして大繁盛するのだが
今はだれも知る由もない。
ちょっと小話
*
俺はランチャー
海辺の近くの冒険者ギルドに併設された店の料理長兼店長だ。
そうだなぁ。
はじめは あぁ、世間知らずのどっかの坊ちゃんが家出してきたんだろうな。と思ってたさ。実際身なりもよかったし、身のこなしがその辺の野蛮なやつらとは違う。
「-----で、はい。これで登録完了。
頑張ってね。新人冒険者さん。」
「はい。ありがとうございます。」
見慣れた登録光景だった。
ああ、新人か、と 思ったが
茶色の髪で 何処にでもいるような少年だった。
依頼ボードの前で難なく文字を呼んでいるようだし
教養もありそうだから
食堂で雇っても、いいかな
と思って 軽い気持ちで声をかけたんだった。
ちょうど、給仕が退職してたから、
ギルドで求人募集 かけようかと思ってたし。
「え?マジっすか。
助かります!宿と仕事 すぐにゲットて
俺、マジついてるっ。」
にっこりと 笑うと、なかなか 愛嬌があるじゃないか。
よし!気に入った!
「おう!よろしくな 冒険者チェース!」
*
チェースはよく働いた。
出身はやっぱり 貴族らしい。
そこん所は詳しくは突っ込まねぇが
兄にすべて押し付けて 逃げてきた。っていうから
お家騒動だろうな。面戸くせぇな、貴族って。
チェースは貴族にしては珍しく 普通の茶色の髪だからな。
魔力も そこそこしかないんだろうな。
俺らからしたら十分だか 貴族の世界では無理だろうな。
貴族ってやつは魔力がすべて らしいからな。
たまに来る「騎士」のダイナラスも 王宮騎士まで上り詰めたが身内の失敗とその後始末でこの町にとどまっているって言ってるしな。魔力が多いだけでもダメ。
やっぱり貴族ってやつは面倒そうだ。
逃げてきた!なんて言ってるチェースだか、
実に楽しそうに仕事を来ないしている。愛嬌と元気さは
周りを幸せにするな。
冒険者としての実力も少しずつ上がっていけばいいが。
そう思った矢先だった。
依頼先からチェースはいなくなって
戻ってこないことを知らされたのは。
*
「え?なんだって?」
「ですから、冒険者チェースから、別れの言霊です。
ききますか?」
赤いフードをかぶった女がきたときは
戸惑った。
なにがあったんだ?
単なる領主のお嬢さんの同行者の仕事じゃないかったのか?
焦る気持ちを抑えて、
店の連中と 見ることにする。
女は 魔法具を出して、
何やら唱える。
ぶおん。と チェースが浮かび上がり
『えーーっと、 俺は・・・旅立ちます。』
と困ったように、恥ずかしそうに笑っていた。
『ありがとう。
お世話になりました。・・・えぇと、
これって 『言霊』の魔法 出来る?
わかんない?まぁ、やってみるよ。』
『・・・こほん。
”悪きものを避けよ この先の幸福を願う”
えぇっと、成功したかなー?』
きらり、と空気が光った気がする。
にこり、と 見慣れた愛嬌のある笑顔で
チェースは『じゃ、またね!』といって 映像は途切れた。
「・・・というわけじゃ。
チェースによくしてもらって 私からも感謝を述べよう。」
そういって 赤いフードの女は 妖艶に微笑んだ。
店をでると、たぶん ありゃ、騎士だろうな
という感じの立派な腕章を付けた 男どもが
赤いフードの女に近づく。大丈夫か?
と思ったが、赤いフードの女は どうでもいいように
男どもをあしらった。
「ウルーチェ様!!」
「うるさいのぉ。」
「ですから、彼はどこに!!」
やいやい言いながら 女は隣のギルドに入っていった。
きっとさっきのメッセージを見せるためだろう。
あー どこぞの貴族の三男ぐらいか と思っていたが
意外と身分も高かったみたいだなぁ。チェース。
ま、また そのうち遊びに来るだろ。
そう思って、俺はいつものように仕事をするだけだった。
「ほら、持ち場にもどれーー。」
でも、彼らは知らない。
チェースの魔法によって 聖なる守りにも似た
「光の加護」がこの店にかかったことを。
小さな清めと癒しが この空間にできたことを。
そのうち パワースポットとして大繁盛するのだが
今はだれも知る由もない。


