王子は冒険者になる!



「なによぉ。チェースは「光」使えるんでしょう?
 ちょっとぐらい、いいじゃない。ねぇ?」

せっかくのお祭よ!
ユリカお嬢様は 屈託のない笑顔を向ける。

「ははは。ユリカ。無理強いはよくないよ。」
ロック様がたしなめる。

「じゃぁ、命令するわ! 
 今は私が『依頼者』なんでしょ?!」
「うーん。でもねぇ」
ロック様が優しそうな笑顔でユリカお嬢様をよしよし、と撫でる。

ジョイルが
心配そうに近寄る。

彼の仕事である増幅の陣は書き終わったらしい。

「・・・チェース。
 あの、あんまり「光」は使わないほうがいいんじゃ?」

「おぉ、ジョイル。
 そーなんだけどさぁ・・・一応『依頼者の命令』だとさぁ・・」

一応、冒険者として
依頼者の命令は基本 聞くもんだ。

もちろん、許容範囲内でだよ?


「ははは。私が作ったその光の収集の陣に触れたら
 持っている80%ぐらいの光の魔力が抜かれるから
 たぶん『術』が解けるよ。」
「ウルーチェ先・・・っと、ウルーチェ様。
 やっぱり そうですよね? 」

ウルーチェ先生が ふふふ、と妖艶に笑う。
この姿で真っ赤な口紅がよく似合う。

中身はウルーチェ先生だけど。

「もぉ。なによぉっ!!
 ちょっと 力をいれるだけじゃない!一緒に参加したいのにぃ」

ぷんっとお嬢様が怒って
ロック様が まぁまぁ、となだめる。

ウルーチェ先生は
ふぅむ。とちょっと考えて、
にこり、ときれいに 笑う。
やべぇ、その笑顔・・・冷や汗が出る。

「ふふふ。いいこと考えた。
 ロックパティ=シャボンワーク。取引と行こうか?」

「・・・?な、んでしょう?
 賢者ウルーチェ。」

恐る恐る ウルーチェ先生を見るロック様。
なにするんだろう。
俺のほうが怖いわ。

「ふふふ。そんなに驚くでない。
 この町すべてとシャボンに「光の守り」をかけよう。
 あぁ、そこの森までも。」

「なんと!ありがたい!!!」

「そのかわり、
 そいつがほしいのじゃ。」

すっと指をさした方向には・・・




「・・・え?ぼ、僕ですか?!」

ジョイルが 引きつった笑いを浮かべた。

「お、恐れながら 賢者ウルーチェ様。
 ジョイルは私の義弟であり大切な家族です。
 優秀な右腕として教育と成長をしております。---それを・・・」

「なぁに、そうだなぁ・・・一年・・・
 うん、半年でもいいのぉ。
 世界を見るのに 付き合ってくれればいい。
 それで ここに戻るのも そのまま本人の自由にさせてもいいしのぉ。」

「しかしながら、ジョイルはまだ成人もしていない
 まだまだ 未熟で 賢者ウルーチェ様の役に立つとは・・・」

「ははは。
 ジョイルは、こいつと旅に出るのだよ。
 私の 助手たちは間に合ってるしの。」

ウルーチェ先生は嬉しそうに ぽんと俺の頭をなでる。

「へ?俺?」
「そうじゃよ。かつての旧友と、互いに
 見分を広げよ。」

にやり、と笑うウルーチェ先生。

あ、こりゃだめだ。
絶対 逆らえないパターン。

ちらりとジョイルを見ると 口をパクパクさせて
状況を飲み込めていないようだ。

そうだよなぁ。