結論から言うと
劇は すっげぇ楽しかった。
王都にいたときは むしろ 王宮に来てもらってた立場だけど
劇場のほうがいいな。
あれ、父上とか 母上 損してるって!
まぁ 立場上、頻繁に王宮から出れないのはわかるけどさ。
専用劇場だから パフォーマンスも派手!
水の飛沫も 火の熱気も めっちゃ臨場感!
すげーな。
「ふふ。気に入ったようね。
私が 見たいって言ったから見れたのよ?」
「ありがとうございます。ユリカお嬢様。
マジすごかった。
やっぱり 劇場だと、ちがうなー。大迫力!」
にこにこ しながらお礼を言うと、
「か、感謝しなさい!」
と ぷいっと 顔をそむけられた。
「・・・チェース。
無自覚に 笑顔を振りまいては・・・」
「えぇ?今の?
別に好感度要素はないんじゃないか?」
魅了とか 使ってないし。
単に 俺が素直に礼を言ったから照れただけじゃないか?
そんなんで、俺 うぬぼれないし。
と、言ったらジョイルが 小さくため息をついた。
「・・・魔力を抑えていても
貴方の 笑顔は『魅力的』なんじゃないんですか?」
「げ。はっず。
ジョイル、よくそんな恥ずかしげもなく
そんなセリフ吐けるな。」
「・・・改めて言われると照れますが、
これくらい『貴族』なら普通でしょう?
だいたい、「光の王子」のほうが もっと甘いセリフを
恥ずかしげもなく・・」
「あぁ、アレな。」
うん。納得。あれは聞く方はいいかも知れんが、
いうのはなかなか恥ずかしいよな。
恥ずかしい割に言葉遊びだから めっちゃ頭使うし。
だってあれは
光の王子フランチェスコ役って感じだったもんな。
俺だけど、みんなの望む 王子をやってたって感じだからなぁ。
*
屋敷に戻ると、何やらあわただしかった。
5日後の祭りの光の術者が
王都からもう いらっしゃるらしい。
本当はあさってくる予定だったらしいから
大慌てで支度を整えている。
おぉ。迷惑だな。
急な予定変更。
ジョイルもあわててその用意に 加わる。
お嬢様は あら、大変ね。
と言いながら
素知らぬ顔で
テラスを開けて。なんて言いながらお茶の用意だ。
俺はというと、エントランスに取り残されて
どうしようかな。 と思っている。
今日の「同行者」の仕事は勝手に終わり、ってことでいいかな?
いいともー。
王都からくる「光の術者」だろ?
もし、「フランチェスコ王子」と顔見知りだったら面倒だしなぁ。
と そんなことを考えていたら
むにゃっていうか、ぶわん、っていうか
独特の空間のひずむ音がした。
「チェース!下がって。」
護衛さんから声がかかる。
おっと、この屋敷は中央エントランスが
移転スポットか。
ぶわっと 光る床 にじみ出る移転の陣。
「「「「お待ちしておりました」」」
・・・・え?
俺は 浮かび上がる人物を 思わず見た。
トレードマークの真っ赤なフード。
幼女にも老婆にも見える 不思議な笑みを携えた
俺のよく知る人物・・・。
「う、ウルーチェ先生?」


