「あぁ、お嬢様を朝食にお連れしたら
護衛っつーか、同行者が 先に食べていたのが気に入らないんだと。
そーいや、ジョイルもいないなと思って
見に来ただけ。」
「・・・そうですか。チェース様。
僕のほうは、朝の散水を済ませましたので あとは
結界と光の加護をかけて終わりです。」
「へぇ。割れやすい花なのか?結界って・・・?」
「・・・いえ、毎日、何度も結界をかけることにより、
強力な盾となり、光の加護を付けることにより 綺麗に輝きます。」
へぇ。綺麗なだけだと思ったら、町を守る壁や盾の代わりなのか。
祭りの時には、この手のひらサイズのかわいらしいシャボンの花は
光の術を浴びて、両手に抱えるぐらいのサイズになって 空に放たれるんだって。
すごいな。
興味深げにきょろきょろする。
「・・・はい。結界をかけたので・・・」
「「「ぼっちゃーん。増幅いきますよーー」」」
庭師が声をかけてくる。
ジョイルはうなずいて温室の中央へと歩く。
増幅?
と思う間に、作業している庭師さんたちがジョイルに向かって
増幅魔法の陣を飛ばす。
すげぇ!ナイスコンビネーションっていうの?
三方向から陣が飛んできて
ジョイルのところでぴったりと合わさる。
ジョイルが 何やらつぶやいて
あ、あれは「光の加護」か。
光を集め柔らかく 守る。そーゆーやつ。
ぼわーーっと光が満ちて
しゅわ、と引く。
がくんっ。
「ちょ、ジョイル!」
「だい、じょうぶです。」
「「「お客さーん、どいてくださーい」」」
庭師からも声をかけられて、
駆け寄るのをやめて、元の位置へと戻る。
すぐに、庭師が回復魔法を飛ばす。
そして、一人がタオルぐらいの大きさの布をすぐにジョイルへとかける。
すぐに ジョイルは立ち上がって
改めて 俺を見て「大丈夫ですので。」といった。
どうやら、いつものことらしい。
って、いつもこんな魔力ギリギリまでつかうのか?
大変だな。
「・・・チェース様・・・。
光の術が どれほど 体に負担か理解してます?」
睨まれた。
すいません。
俺は「光の王子」とか言われるだけあって
光の魔力適正100%じゃね?って感じだからな。
光を使うときは 全然負担を感じない。
昨日みたいに、土、や 緑の魔力で結界を紡ぐと
すっげー疲れるけど。
「でもさ、あんまり無理すんなよ?」
ぽん、と ジョイルの肩をはじくついでに
回復の魔力を流す。
「・・・っ!!!あ、ありがとうございます。
フランチェス・・・っと、チェース様。」
目に見えて、ほほに血の気が戻る。お、よかった。
「もうすこし、回復する?」
くるっと、回復の陣を空中に書く。
あんまり上手じゃないけどさ
空中に陣を描くの。
「 っ!!チェース様!!」
と、さけんで、ジョイルは
目の前に書かれた陣を 手で払うように魔力を拡散させる。
庭師が、「どうしたー?」「はこびましょうかー?」
なんて聞いてくる。
「大丈夫です。ありがとうございます。
さ、チェース様。こちらに行きましょう!」
あわてて、ジョイルに手を引っ張られながら
温室を後にした。
*
ばたん!
と、荒々しく扉が占められる。
「・・・っ 何考えているんですかー!?」
「な、なにが?」
なんか、俺、まずいことした?
「・・・光の、回復の陣は・・・
そんな、簡単に発動するものじゃないんですよ!
解ってます?体力回復だけではなく、状態回復も兼ねるんですよ!
しかも、陣を書くのにも「光の魔力」を使って
発動にも「光の魔力」ですよ!
適性のある 僕でも、 魔力満タンで誰かに『増幅』してもらって
出来るような 消費力の高い術なんですよ!!」
「え?そうなの?」
まじか!
あーでもそうか、魔力で言ったら
回復して、毒抜きして、浄化っちゅーか消毒して、だもんな。
三回分も術をかけるようなもんか。
光、すげぇ!!光最強説だな。
「じゃぁ、一石二鳥じゃん!」
「いっせき・・・?何言ってるんですか?」
くるり、と回復の陣を書いて
ジョイルに向けて発動。どれだけ回復するかはわからんけど楽にはなるだろ。
やっぱり 空中で描くと 魔力の調節がむずかしーな。
「・・・全回復・・・
ありがとうございます。
でも・・・本当に解ってます?フランチェスコ様?!」
「おう!てか、チェース、な。
まぁ、ジョイルって意外と感情出すんだな?」
無表情が多かったからなー。
どなったり、焦ったるする ジョイルって新鮮だな。
「・・・フラン・・・チェース様が 自由すぎるんですよ。
バラシたいんですか?お忍び、でしょう?」
ジョイルが困ったように 告げた。
「えー、まぁそうなんだけど。
友達には 無理してほしくないじゃん?」
「・・と、もだち、ですか?」
「え? 俺と、お前。友達じゃねーの?
やべ、迷惑だったか?図々しかった?」
今の立場上 俺 平民の冒険者。
ジョイル、シャボンワーク家の次男だし!!
一瞬の間をおいて、 ジョイルが つつーーっと
涙を流した。
な、なんで??


