ジョイルもぐいーっとお茶を飲み干す。
良い飲みっぷりですね。お茶だけど。
「・・・しかしながら、王子、
誰の守りもなく、誰の加護もなく、一人で『冒険者』などを
やってると、いろいろな危険や・・・もし正体がばれて
いろんな奴が 利用しようとしてきたりしたら・・・」
「あー。もっともな心配だけど
ほれ、お前も気が付いているんじゃないか?この耳飾り。」
ちらり、と 耳の宝石を見せつける。
魔力の流れや力を見れるなら、
解るだろう。
「・・・ 魔導師バームス様の・・力が込められています。
えぇと、それで力を抑えて・・・いる?」
「正解。そして、たぶんだけど『位置確認』と
『伝達』の魔法もかかってるんじゃないかな?」
「・・・え?」
おぉ、驚いた顔したな。
そりゃそうだ。
バームス先生が 簡単に「俺」を放置するはずがない。
きっと、先生がその気になりゃぁ すぐに連れ戻される。
だから、この冒険者の生活もきっと俺のためになると思ったから
協力してくれたんだと思う。
「いちおうな、逃げ出したー、王子を捨てた―って言っても、
俺は結局、この国の第二王子なわけよ。
だから、最悪 死んでも遺体回収できないと利用されるだろうし。」
「・・・・王子。」
「てか、王子は やめて。
チェースでいいからさぁ。な?ジョイル?」
「・・・では、チェース様。」
にこり、とはにかむようにジョイルは笑った。
おぉ。いい笑顔だな。
笑うと 年相応に見える。てか、俺と同級生なんだけどな。
そのまま、二人で
じっくりと 話をして すっかりお互い、打ち解けるのであった。
*
**
****
「ちょっとぉ!なんで食べちゃうのよ!!」
は?
主語がないですよー、ユリカお嬢様。
てか、朝から元気ですね。
次の日、
夜が明ける前から 警備担当は起きる。
同室になったおっさんは、お嬢様の警備についてもう10年のベテランだった。
やっぱり、経験している先輩の話は面白いな。
警備のコツや、どういった術が効果的など
為になる話も聞けたし。
俺は依頼された「同行者」だけど 警護も仕事入ってるので
今日は朝からの担当だ。
だからさっさと 食事を終わらせて お嬢様の部屋の前で
待機していた。
で、でてきて彼女に「おはようございます。」
といって、食事のために一階の食事をする部屋へと付き添う。
で、優雅に座ったら 食事がスタート。
向かい側にはにこやかに 朝の挨拶を交わすロック様。
あさから、さわやかだなー。
「あら、チェースも隣に座りなさい。」
なんで?
「いや、俺はもう食べたんで。」
ちゃんと後ろに待機してまーす。
と答えたら、 上記のような癇癪を起されたってわけだよ。
「ちょっと!!なんで食べちゃうのよっ!」
ぷぅっと少し 拗ねたようにユリカお嬢様は カチャン お皿にスプーンを置く。
あ、こーゆー時に 音を鳴らしたら
マナー違反なんだよ!
よく怒られてたなーなんて思い出す。
「もうぅ。昨夜も一緒に食べれなかったから
朝食は一緒にと思ったんのにっ。」
「えー、別に単なる同行者にそこまで構わないでください。」
スープ冷めますよ?
ロック様は苦笑しながら「まあ、まぁ、」なんて言いながら
ユリカお嬢様をなだめている。
あ、そういや ジョイルもいないな。
一応、この屋敷の義弟なんだろ?ポジション的には「ジョイル様」じゃん?
一緒に朝食とらないのかな?
きょろ きょろ、と部屋の後ろに控えている
使用人を見るけど見当たらない。
怒りながら食べているエリカお嬢様を ほおっておいて、
下がって この屋敷のメイドさんみたいな人に聞いてみる。
「ね、ジョイルは?」
と聞くと、怪訝な顔をされた。
あ、しまった「ジョイル様。」か。
この屋敷の次男だしな。
ジョイルはどうやら昨日の温室にいるらしい。
お嬢様の 護衛に告げて
俺はさっさと、ジョイルのもとへと向かう。
*
「おはようございます。ジョイル様。」
「・・・・ど、どうしました?フラン・・いえチェース様。」
温室の扉を開けて、
ジョイル様って呼んでみたら、すっげぇ嫌な顔をされた。
「え、だって・・・
ジョイル様。この屋敷の次男 だろう?
一応 単なる冒険者のチェースが呼び捨てにしたらまずいかなって。」
「・・・・構いません。というか、やめてください。」
ふわ、と ジョイルは頭を下げてひざを折る。
ちょ、ちょっとやめてよ。
目立つ。
庭師がちらりと、何事かとこちらに目をやる。
「わかった、分かったって。ジョイル!」
「・・・・で?何か ありましたか?」
ジョイルが 顔を傾けて
にこり、と笑った。


