ジョイルは温室の中央に入り
あたりを見回す。

庭師たちが それに気が付いて
目くばせをして
頭を下げて少し 離れてもらう。


「ジョイルぼっちゃーん。
 増幅、かけますか??」

「・・・お願いします。」

「おーい」
「はーい。」「いきますよー」


普通 一般的に「魔術」を使うのは貴族だが、増幅、といった生活魔法は基本魔法なので誰でも使える。ただ、ここまできれいに 三人がかりでかけるのは経験と技術がいる。
さすがシャボンワーク家の庭師たちである。


術の増幅、が かけられたところで
ジョイルが術を紡ぐ。

結界、の術だ。

勘違いしている奴も多いが 結界と呪い は やりかたが似ている。
物質を排除したり対象物を守るのが 結界。
呪いは、回復しようとする体の力を 排除し、対象物を回復から守る。

だから、生家であるリザマート家は  結界や呪い そういった術に長けていた。
魔力の相性もあるんだろうけど そういった術の練習相手といって
リザマートの義兄たちから さんざん 術を受けたジョイルは
そういった術に 人一倍詳しかったし、光の反射で返し切れなかった呪いや術を解くために
独学で解除法も学んでいた。


温室の隅まで結界が包んで
花に 術がかかったのが確認できた。

よし。あとは・・・

ジョイルは力を入れるように
大きく手を一回転させた。

きらきら、と光が 散らばる。

「・・・・くっ。」

結界を施した花に さらに光の加護をかけたら
物理的にも、術的にも強くなる。

ただ、光の魔力はいくら適性があるとはいえ
増幅させているとはいえ、
ジョイルの魔力量では 温室を一気に満たすのは
ギリギリの力だ。

「「おぼっちゃん!」」


がくん。と膝から崩れ落ちて
肩で息をする。

「・・・す、いません。
 大丈夫です。ご迷惑を・・・あの」

「ほら、しゃべるんじゃねーって。ジョイル坊ちゃん!」
「はい、ターチ!あしもって。」
「おーーい。だれか!魔力回復の布団持ってこーい!」

すこし 意識が遠くなりながらジョイルは
駆け寄った庭師たちに抱えられた。

あ。
端の一列だけ、光の加護が届いてない・・・

温室を引きずりだされる
とき、一瞬だけ みる。

「・・・ちょと、」

まってください。と 言えたかどうかわからないが
最後の力を振り絞って、
空に術を書く。

「ちょ、ジョイルぼっちゃん!」

ぱぁあ・・と、
光が輝くと 同時にジョイルの意識はとんだ。


完全に魔力切れである。

光の術は 体への負担が大きい。




目を覚ました ジョイルは義兄であるロックパティから
ものすごくお叱りを受けるのだが、


明日は、
お嬢様がいらっしゃるから
その前に万全の状態にしておきたかったんです。

と、義兄に言って 事なきを得たのだった。