「やぁ。初めまして。
 ジョイル君?」
「いらっしゃい。」
「僕の弟になるんだね?」

どうなっているのかわからないジョイルは
とりあえず 目の前に立っている
シャボンワーク家の人々に礼を取る。

ぱっと顔をあげると、
ジョイルは 目を見張った。
にょっきりと とがった耳の後ろから生えた角に
少し驚きはしたものの、
ジョイルは、じぃっと彼らを見つめた。
あ、奥様は耳が長いだけで角は生えてなかった。

思わず、「魔眼」で見てしまう。

・・・強いんだな。
名前しか見えない。
属性も何の獣人かも、種族も
なにも、見えない。


「あぁ。君はリザマートの「魔眼」を持ってるんだね。
 僕のは『視え』ないよ。君がもっと強くなったら
 見えるかもね。」


「す、すいません。
 思わず・・・」

「構わないよ。魔眼もちは無意識に『見たり』術を展開するから
 大変だろう?」




シャボンワーク家の領主は
ジョイルを優しく受け入れた。






知識と経験を手に入れたジョイルは
あぁ、義父のやったことは、
完全に「やつあたり」の「児童虐待」なんだな、理解した。

別に、怒りはなかった。

「だって、僕が悪いから。」

そうすると、
義兄であるロックパティ様が
ものすごい悲しそうな顔で 笑ってから 頭を撫でる。

「僕は、ジョイルに出会えてよかったよ。
 生まれてくれて、よかったよ?」

ぐりぐり、と頭を撫でられる。

「でも、僕がいなければ 両親はまだ幸せだった」

そんなこと言ったら
ロックパティ様は 大量のお菓子と大量のおもちゃを持って
ジョイルの部屋へ突撃してくる。


「ジョイル。もう少し 我がままでもいいよ!
 ほら、勉強も後で!!」

「遊んでばかりいては、ご飯が食べれない。
 課題を終わらせないと 食事は抜きでしょう?」

と言ったら
ロックパティ様は、ぎゅーーっと抱きしめた。

もともと、面倒見の良いロックパティである。
事あることにジョイルに構い、
家の者たちも、ジョイルに優しく
そして、知識だけではなく 優しさと、愛情をゆっくりと教えた。


ようやく、笑えるようになったのは
このワークシャボン家に養子に入ってから3年後、
義兄であるロックパティが 若き当主に代替わりする その日。
「おめでとうございます。お、義兄様。」
ちょっとはにかみながら
少年らしい笑顔で伝えたのである。




ジョイルとフランチェスコが再開するまであと一年。