とりあえず、
ジョイルには座ってもらおう。

「えぇと、腰かけてくれる?」

「いえっ、恐れ多いですのでっ」

「いや いや 今の俺はただの「チェース」だし。」

ほんと、困る。
てか なんでバレたんだろ。

しぶしぶ ジョイルは向かい合うように腰かける。

「・・・屋敷に入ってきたときから
 気が付いていましたが 会うまで半信半疑でした。
 会ったら はっきりと「フランチェスコ様」だと確信しました。
 ぶしつけに『見て』しまいましたが、確かに光の王子だと・・・」

「えー?マジで?
 姿も変えて特徴的な光の魔力も抑えてるんだけど。」

てか、ぶしつけに見たって
あれは見るというか睨んでましたよ。うん。うん。


「・・・私の魔力は操作に優れていますので・・・
 隠ぺいの術に強くて隠された本質を見抜けます。
 ・・・恐れながら、
 側近の候補として そばにいたから フランチェスコ様の魔力だと
 すぐに気が付いたのかと。」


「へぇ。すごいな。」

「・・・あのっ。ユリカお嬢様は このことはご存じで?
 フランチェスコ様は ユリカお嬢様とーーー」

「いやいやいや、
 さっきも言ったけどさ、そーゆー 関係じゃないし。
 たんなる冒険者とその依頼主。
 ここに来るまでの「同行者」としてきたんだよ。」

あからさまに ほっとした様子のジョイル。
恋 ですなぁ。

「・・・よかったです。
 フランチェスコ様と、ロックパティ様じゃぁ、立場的に勝ち目はありませんから。」

ん?

「え?きみが ユリカお嬢様を好きなんじゃないの?」

「・・・いえ、ユリカお嬢様は領主様の『許嫁』です。
 ただ、ユリカお嬢様が成人なさってからのご成婚ですので。
 フランチェスコ様が望めば・・・」

「いやいや、そんなん いらねぇって。」

ビビるわ!
略奪愛なんて趣味じゃない!

そっかぁ、だから ロック様とユリカ様の距離が近かったんだな。
友人だといってしっかり 『恋人』じゃん。


へー、と他人事のように思っていると、
遠慮がちに ジョイルがお茶のお代わりを注ぎながら
訪ねてきた。

「・・・あの、ところで、
 フランチェスコ様はどうして こんなところに?」

「え?」

それ、聞いちゃう??

思わず、にっこり 笑っちゃう俺でした。