与えられた部屋はシンプルな二段ベッドに 小さなソファーセットがついている
小奇麗な部屋だ。

誰かと同室だろうけど、
まぁ だれかな?
荷物は俺の分と、もう一つあるから護衛の誰かだろうな。

あー、もうだめだ。
魔力が少なくて、ねむい。

せめて お茶を飲んでから眠ろう・・・
厨房で水もらって来ようっと。


コンコン

「?はい?」
だれだ?


「・・・失礼します。」

「え?えっと?」

入ってきたのは、ジョイルだった。

なんだろ、なにかあったかな?
どうぞ、と招き入れるが
部屋の扉の所から入ろうとしないジョイルは
俺を見つめた。

「・・・恐れながら、
 チェース様と、ユリカ様の関係は・・・?」

あぁ、釘を刺しに来たのか。

「あぁ、別に、「特別」な関係とかじゃないですよ?
 えぇと、ジョイル様の思っているような
 恋愛感情とかもないですし、ただの 同行者依頼を受けた
 冒険者とその依頼主、です。」

だから、安心してねーという風に
笑って見せる。

「・・・私のことはジョイルと呼び捨てで結構です。
 その、恐れながら・・・・」
「わかった、ジョイル、って呼ぶな。
 俺もチェースでいいぞ。
 同い年だし。」


ジョイルは ちょっと困ったように
顔をゆがめてから、「あまりうまくはありませんが」

といって、
ぽや、っと 淡く白い光を手に集めて
それを俺の手に乗せた。

「あ。ありがとうございます・・?」

ちょっと魔力と体が楽になる。
光の回復魔法だ。
なんてことない顔をしているけど
ジョイルは 一筋の汗をかいている。

水の癒しとかでもいいのに
光だと少し魔力も回復するからかな。
てか、
超 睨んでくるやな奴だと思ってごめん。
めっちゃ良い奴じゃん。

「・・・・あの、よろしければ
 先ほどのお茶を私が入れましょう。
 お待ちください。」

「あ、見てたの?
 正直助かる。よろしくお願いします。
 てか、普通にしゃべっていいよ?同級生 だろ?」

「・・・恐れながら、
 これが、私の普通ですので。」

そーっすか。
変な奴だな。いい人っぽいけどさ。

そーいや 一緒に勉強しているときも
喋らない、変なやつだなぁと思ったんだよな。

真面目で精いっぱい勉強して
怖いくらいの気迫で学んでるし。



二度目に来た ジョイルは
ワゴンに お茶と
簡単な軽食も持って現れた。

おー、気が利く。
礼を言いながら 持ってきた軽食にかぶりついて
お茶を一気に飲み干す。
あ、やべ、マナー違反。
まぁいいか。

おぉ、いい茶だな。 少し 魔力が回復するのがわかる。
はー、よかったよ。
ゆっくりできそうだ。
魔力切れでそのまま 寝たら 次の日二日酔いみたいになるんだよなー。

ちらり、とジョイルをみると立ったままだ。
あー、大変だよな。立ってまつの。

「座れよ。なんでたってんの?一緒に飲もうぜ?」

お茶だけど。

「・・・恐れながら、
 どうして・・・その・・・」

なんだ?
ジョイルはぐっと、意を決したように
立ち上がった。


「・・・ 。御無沙汰しておりますっ。」

ジョイルが 頭が床につくんじゃねーかというくらい
綺麗に臣下の礼を 俺に向けた。

っ!!!って、

「え?!」

「・・・覚えてはいないでしょうが
 幼少時にご一緒に 勉強をさせていただいたジョイル=シャボンワークです。」

「え?ジョイル=リザマートじゃなかった?
 養子に入ったの?」

「・・・はい。アレから、養父のもとを離れ
 実母の親戚側をたよりシャボンワーク家に養子として入りました。」

「へぇー」

「やっぱり、フランチェスコ様なのですね。」

あ、やべっ。普通にばれちゃったし 誤魔化せないじゃん。