こほん、と 小さく咳払いをして
後ろに控えていたジョイルが「おそれながら、」と発言してきた。
「・・・今度の祭りの「光の催事」の
増幅魔法円は 僭越ながら、私が構築いたします。」
「あら、ジョイル。
さすがねぇ、若いのに。」
見た目だけだと、ユリカお嬢様のほうが幼いですよ。
と心の中だけで思う。
ジョイルは嬉しそうに笑った。
おぉ。笑えるんだ、こいつ。
「・・・はい。
今回のお祭りは ユリカ様も光の魔力を注ぐというので
私が増幅魔法で補助できるように・・・訓練いたしました。」
「まぁ。頑張ったのね。偉いわ。」
・・・あぁ、
そうか、こいつ。お嬢様狙いか。
だから さっきから俺を睨みつけてるのか。
納得!
「チェース。ジョイルとは同じくらいかしらね?」
「そうっすねぇ。俺はいま13・・・14歳ですけど?」
「・・・私も14歳です。
同い年ですね。えぇと、チェースさん?」
ぎろり、と 睨まれる。
だから そんなに睨まなくてもユリカお嬢様に触れないし。
ただ連れてこられただけだし。
「はい。冒険者をしています。
チェースです。」
「私は、こちらのワークシャボン家でお世話になっています。
ジョイル と言います。」
ジョイルは 静かに頭を下げる。
まっすぐに見られて ちょっと居心地が悪い。
髪の毛と同じ 深い紫の瞳に射抜かれるようだ。
てか、うーん、ジョイル君は誰かに・・・にてるなー。
誰だったかな。
「チェース。ジョイルはすごいのよ。
魔力量もあるけど陣の書き方もきれいなの。
それに頭もいいのよ。座学も優秀。」
「・・・・ぅ。ありがとうございます。
領主さまのおかげでございます。」
「なぁにいってるの。 ジョイルは王宮で
王族の「側近候補」まであがった実力者 じゃない。」
「は?」
思わず、声が出た。
「?どうしたの、チェース?」
「あ、いえ、
失礼しました。何でも ない です。」
王族の側近候補って・・・兄様の訳ないよな。
アレク兄様は 黒の魔力が強いから
魔力を抑えることに長けていて兄様の魔力に 慣れるようにと わりと幼いころからあの青頭のサントスが側近になることは決まってたし。
父や母の「側近」にするには 幼すぎる。
てことは、俺?
えー?側近候補ってなんだよ。
いたか?そーゆーやつ。
てか、俺の知らないとこでいろいろ決まったのかな?
俺の側近は ジゼだったし。そーいやジゼ元気かな。
クールな顔してすんげぇ怒って居そう・・・てか、悪かったな。
きっと 一番 迷惑をかけて 後処理とか大変そうだ。
うん。なんか 送っとこう。
ごめんね。
って 書いたら許してくれるかな?たぶん、神経逆なでして
すんげぇ怒るだろうな。
「あぁ、チェースも没落貴族の子だったかしら?
もしかしたら、王都で出会っているかしらね?」
ちょっと違うけど、
面倒なので否定しない。
まー、サンカ姐さんあたりから
貴族っぽい王都にいたらしい 冒険者って聞いてるだろうしな。
「えーっと、失礼ながら ジョイルさんは、
王宮に・・いらしたんですか?」
「・・・第二王子の側近予定だったんですが
ちょっと、家庭の事情で・・・いろいろ ありまして
親戚筋をたどって こちらにお世話になってるんです。」
はい。やっぱり俺の側近候補かよ。
初めまして、こんにちは。
・・・・うん?初めまして?
うん?
なまえ・・ジョ・・・イル?
ぶわぁぁあああ・・・っと記憶が広がる。
「あぁ!!!ジョイルっ・・・さん」
とっさに、さん付けた俺を褒めてほしい。
思い出したよ!ジョイル=リザマート 王宮で一緒に勉強していた
あの無口なアイツだ!!!


