廊下の窓から光がさす。
のんびりした いい天気だな。

「ジョイル、久しぶりね。
 今年の出来はどう?」

「・・・はい。ユリカ様も相変わらず
 かわいらしくお元気そうで何よりです。
 今年も順調に育っております。
 2~3日中には満開になるかと。」

ユリカお嬢様とこの目つきの悪い紫少年は知り合いだったらしい。
てことは、ロック様の屋敷に仕えている従者とかかな?

俺と同世代でお客様の案内も任せられるって
すごいやり手なんだな。

すげーな。


と 話しているうちに
温室が見えてきた。

温室っていうか・・・部屋とテラスを隔てて隣接している
ガラス張りの部屋って感じだな・・・

「どうぞ。」
「ありがとう。」

中に招き入れられる。

「う、わぁ・・」

俺は 思わず声を上げた。


美しい。

シャボン玉の花。

ふわふわとした透明な花弁が ぷくりとひとつひとつ膨らんでいて
光に反射してきらめく。

あぁ、すごい。
この町の、この領主の代名詞でもある「シャボンの花」

こんなになっているのを見るのは初めてだ。


「ふふ。チェース。
 口が開いてるわよ。」

「ふわっ。っと、すいません。お嬢様。
 あまりにも綺麗で。」

「でしょ?毎年、この季節になると遊びに来ているのよ。
 一週間後にはこれを一斉に外に放つ「祭り」があるわ。
 楽しみね。」

へぇ・・・って、一週間後?

「あの、ユリカお嬢様?
 俺、一週間も君に付き合わないといけないの?」

「あら・・・一週間じゃないわよ?
 ちゃんと依頼書をお読みになられた?
 きちんと 記載されてるわ。」

にこ、っと ユリカお嬢様が笑う。
綺麗に笑うときほど 怖いんだ。
だって俺だって、企むときほど 丁寧に笑うしな。

胸ポケットから
紙を取り出す。

「って、二週間かよ!!!」

めんどくさっ。


「あら、ココのシャボン祭りは
 三大祭に数えられるくらい大きくて
 華やかで素敵よ。
 しかも、今年はシャボンの花の出来もいいしね。」

うっ。マジか・・・。それは見たい。

「しかも、光の魔導師も参加しての式典は圧巻よ。
 シャボンの花の放出とともに光の魔術が一斉に
 町を包んで輝くの。この輝きをまとったら一年健康になれるといわれてるのよ。」

「へぇ・・・魔導師がくるのか」

めったにいない光魔導師。
一応、俺も資格を持ってるけどさ。ほら、この間まで「王子様」やってたからほかの魔導師に会う機会ってなかなかなかったけど、光の魔導師は珍しい。
たぶん、国に登録されているだけでも8人ぐらいだったかな。

多少使える人や 騎士レベルまで使える人はいるけど「光」は消費が激しいから、
教えて導けるまでの力を持てる人は少ないんだと。
俺は幸いにも光の魔力が多いし、めっちゃ適性あるから魔力消費激しいとか思ったことないけどな。

ただ、適性の低い闇の魔法とか、使うとすんげー疲れるから
そーゆーことだろうな、とは思う。


「あなたも 光の術が使えるでしょう?
 ついでに参加しなさい。光の魔力を注ぐ人は上の雛壇から式典を見れるのよ。」

「え?ヤですよ。めんどくさい。」

そんなことやって 目立ったらどーすんだ。

「なっ、何言ってるのっ。式典では私の隣に座らせてやるっていうのよ!!
 まったく、光栄に思いなさいっ。」

「えぇ・・・?
 てか、お嬢様、光魔法使えるんだ。」

「まぁね。」

そういえば、「妖精族」のハーフだっけ。