王子は冒険者になる!


駆け寄ってくる
メタルグリーンの髪をきれいに横に結った美人な・・
子供?

8歳ぐらいかな?小さな子がニコニコと俺たちに近づいてきた。

あれ?「お嬢様」は20歳ぐらいじゃ?
可愛いけど、幼女って感じだな。


「素敵だったわ!
 わざわざ屋敷のほうまでかけてくれるなんて。
 お礼をいうわ。」

「「恐れ入ります。」」

ダイナラスさんのタイミングに会わせて俺も頭を下げる。

「あぁ、私に もう一度見せてくれない?
 「光の輝き」でいいわ」

「恐れ入ります。お嬢様、
 光の魔法は魔力消費が激しくて
 連続して発動できません。ご容赦ください。」

ダイナラスさんが、困ったように 頭を下げる。
てかさ、光の輝きってなんだ?
ただ、魔力を輝かすやつか?
簡単だし魔力消費も少ないからできないことはないけど
やりたくはないな。
あんまり、目立ちたくないし。

「あら、そちらの坊やは まだできそうだけど?」

「俺・・・ですか?
 あーー無理です。ごめんなさい。」

ぶっきらぼうに 断ってみる。
てか、坊やって・・・まぁ、確かに13歳の坊主ですが
君に言われたくはないよ。
明らかに、俺より年下ーーー。

「まぁ、私のお願いを断るなんて。
 どうなるかわかってるの?!!
 魔力を絞り出して見せればいいじゃないのっ。」

ぷぅっとほほを膨らませて怒るお嬢様。
周りの護衛や侍女があわてたように なだめる。

おお、絵にかいたような『わがまま令嬢』だな。

と、ぼーっと見てたのもつかの間、
彼女は どん、と足を踏み鳴らすとともに 地面の芝生がにょきにょき~~っと大きくなって
「「うわっ!!」」
俺とダイナラスさんをあっという間にぐるぐると
捉えた。

おぉ。すごいな、ダイナラスさんも俺も動けないほどの
束縛じゃん。

「すいませんっ。ユリカお嬢様!!早く解除を。」
「あぁ、どうしましょう。」
「ほら、急いで切って!!」

周りがパタパタとあわてる。

「もぅっ。私のいうこと聞かないからでしょぉ!!」
ぶおぉぉおっ

お嬢様の周りにぶわっと風が舞う。

おー、すごいな。
って、眺めている場合じゃないな。


「ダイナラスさーん。コレどうする?」

「ん?まぁ、あんまりやりたくないけど、
 火の術なら燃やせる・・・かな?
 オレ そーゆーの苦手なんだよな。」

バチバチ、と はじける音がして
束縛している緑のツタを焼き切る。

あわててこの屋敷の使用人が「申し訳ありません。」と言いながら
駆け寄ってくる。
俺もそれにならって火の呪文で焼き切る。

あっちぃなっ。

「もう、いいわっ。
 貴方たち! 同行なさいなさい!! 
 出発は明日の朝よ。詳しくは、サンカに聞くことね。」

お嬢様は、まだ怒りながら
言い捨てるように、屋敷に帰っていった。

「・・・・ダイナラスさん?
 同行って、なに?」
「チェース、オレに聞くなよ。
 なんなんだ、あのお嬢様は・・・」

二人して、唖然と 彼女の後姿を見るのだった。