そもそも、
「台車」て なんだよ!荷物運ぶのにそんなたいそうな術をかけんなよ!
領主さまだからか?てか、昨日すげぇいい領主だなとか思ったのに、
こーゆーのは金かけるんかい!
「ほら、この台車だな。」
「てか、ダイナラスさん、なんで台車なんか・・・」
台車?
台車って、そうそう、荷物を載せて
手押しで押してみたいなイメージじゃん?
「なにこれ?!」
そこにあったのは、
台車というか、「車」みたいな
豪華な箱だった。
「だから、これが「台車」だって。」
「・・・・そ、そうなんだ。」
「がはは。なんだ、チェースは台車を見るのは初めてか?」
「え?あ、そう、そうだね。
初めて・・・というか、初めてです。」
「がはは。敬語になってるぞ。
これはなぁ、領主さまのお嬢さんが乗るんだと、
隣の領のお友達の所に行くのにこれを使っていきたいんだと。」
「は?なんで?
移転魔法でいきゃぁいいじゃん。」
確か、領主さまのお嬢様は 少し遅くにできた子で
両親や離れた兄たちからかわいがられている子なんだろう?俺が『子』というと小さいイメージだが20歳ぐらいらしい。ダイナラスさん情報。
そんな 大事な子をわざわざこの「台車」とやらに
のせて隣の領まで行く意味が解らない。
移転魔法なら一瞬だ。
「うーん。チェース、最近のはやりに疎いなぁ。
最近はこの「台車」で景色をゆっくり見ながら『旅行』を楽しむのが
貴族の流行なんだと。
あえて、不便を得て楽しむ。みたいなやつだな。」
「えぇ・・・。面倒だね。誰だよ。
こんな流行を作ったやつ。警備の面からも面倒、の一択じゃん。」
「あぁ、王族の第二王子発案らしいぞ。
どうやら 動物?に引かせて丸いわっかを付けた奴に乗りたい
移転魔法じゃなくて外を見て外出したい?だったかな?
そんなコンセプトで作られたらしいぞ。」
「は?!」
まさかの、俺 発信?
そんなこと、言った覚えは・・・・あぁ!!
そーいや、超ファンタジーっぽいのに、
なんで『馬車』とかないのか『列車』とかあれば
すげー、いい旅が出来そうなのにな、みたいなこと言ったっけ。
たしかに、こんなにゴージャスじゃない車っぽいにのせられて
風魔法で浮かせる装置に
乗らされて 城下一周・・・したな。
あっ!! あれ、『試乗』か!!
えー、まじかぁ。
それにしても・・・
「ダイナラスさん、詳しいね。」
「あぁ、コレの開発のトコにオレの奥さんいるし。」
「え?!結婚してるの?ダイナラスさんが?」
「がはは。なんだ、チェース 失礼だな。
オレの奥さん、超美人でびっくりするぞ。」
技術科かな、王宮魔術師のほうかな。
そんなこと言いながらも
この「台車」を包むようにダイナラスさんは
大きな陣を書き終わる。
あぁ、きれいだな。
綺麗な増幅魔法と結界魔法が混ざっている。
『結』で
光結界を増幅しながらいつの間にか防御も兼ねている結界魔法。
すごいなぁ。ダイナラスさん。
こんな大きな陣をしゃべりながら記入するなんて
汗は書いているが息は切れていない。
ちらりと見ると、ほれ、と言いながら
俺と陣を交互に見る。
はぁ。仕方ないなぁ。
どうやら、この「台車の旅」の発案は俺らしいし
まぁ・・・少しなら大丈夫だろ。
俺は、指先にほんの少しだけ光の魔力をのせて
ダイナラスさんのオレンジ色の魔法陣に触れて
魔力を流す。
「「発動。」」


