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「だーかーらー、
 いくら俺が「光魔法」の適性があるからってこれは無理だって!!」

「がはは。
 大丈夫だ。枯渇しても担いで町に連れてってやるから!」

俺、絶賛 ダイナラスさんに拉致られ中。

なぜかって?
そりゃぁ、俺が元気に食堂の仕事してたからだよ!!





今日の朝。

「おー。おはよう。チェース。
 昨日の仕事は、頑張ったんだって?」
「あ。おはようです!料理長!
 はい。頑張りましたけど、もう大丈夫ですよ?
 一晩寝たら、回復ですから!!」

いつものように食堂の店先で、軽く掃除をしてたら、ランチャー料理長に声をかけられた。料理長も昨日あんなに皆と飲んでたのにケロッと出勤してくるなんてお酒強いんだなー。

「おー、おはよー、チェース。
 仕入れのナッツ少し多めに入れといてー。」
「はーい。ナーリさん」
「チェースおはよ。わたし 机とお皿並べるねぇ。」
「おはようございます。
 俺、裏で用意してきまーす。」

いつものように従業員と挨拶を交わし、
仕入れに行く用意をしていたら、
のっそりと、大きな欠伸をしながらダイナラスさんが現れた。


「ほほう。すげぇな。坊主。
 魔法量も多かと思ってたけど、回復も早いんだな。
 ますます「騎士」向きじゃないか。紹介するか?」

「ダイナラスさん。俺に騎士は無理ですよ。
 回復も・・・若いから、じゃないですか?」

ていうか、俺 昨日はお酒飲んでないし!
普通に寝たわ!
食堂の上の部屋まで(俺が借りてる部屋)声が響いてきてたけどな。

「うおぉ。今 嫌味がものすげー刺さった。」

ダイナラスさんが楽しそうに
苦しむ真似をしながら笑う。

「昨日のメンバーは酒の飲みすぎってのもあるがなぁ。
 光の魔力を使ったから
 今日は怠くてこんな朝から動けねぇよ。」

そんなもんなのか?
あ、でも俺も『闇の呪文』とか使ったら次の日きつかったもんな。
あんなもんか・・・筋肉痛的な?

「あっ。ダイナラスさん まだ準備中・・・」
「大丈夫だ」

ダイナラスさんは、まだ開店していない店内にずかずかと入る。
中で声をかける。「おーい。ランチャー!」
あ。料理長に用事なのか。珍しいな


さて。今日の仕入れは
お、重いのはそんなにないな。
ナッツ類と キノコかぁ・・・最近 値上がりしてんだよな。


「ランチャー料理長! 俺 仕入れに・・・」
「チェース!話はついた!
 行くぞ!!!」


「はい?」





おまえ、まだ体力有りそうだな。
よし、じゃぁ
あと 一仕事だ!

だといわれて 引きずられるようにして連れてこられたのは
海を見渡せる丘に建てられた
領主さまの館。

「あのぉ・・・?」

どうして俺が連れてこられたんだろう。

「だから、オレが増幅の陣を書くから
 もてるだけの光の結界を注ぎ込め。
 そしたらな、この「台車」に術を書くんだ。」

は?

「だから、光の結界をするんだよ。」

は?

昨日の光の浄化とはわけが違うぞ。
結界は広範囲 光の術だから
さすがに力を抑えて なんて器用なことはできない。

この、変化させている茶色の髪も元の色に戻るかもしれない。
そしたら、すぐにバレてしまうじゃん

「がはは。
 チェースは光の適性ありそうだから、大丈夫だって!
 少しぐれぇ発動すりゃぁ 増幅するし。」
「い、いやいやいや。
 そーーゆーんじゃぁなくて。その。」

「あ、発動しなくても大丈夫だぞ。
 物は試しっていうか、適性も試せるし。な?」

にやり、とダイナラスさんが
笑う。



「だーかーらぁ!!!
 いくら俺が「光適正」あるかもしれないからって、これは無理って!!」

「がはは。
 大丈夫だ。枯渇しても担いで町に連れてってやるから!」

俺、絶賛 ダイナラスさんに拉致られ中。
というわけだ。

いやいや、変化の魔術も発動させた状態で
結界は無理や!!!