「お前はまだちぃせぇから
 しらねーかな?
 第二王子の『守護騎士』ってすっげー王族に近い騎士が
 王子をさらおうとした話。」

「え?へ、へぇ・・・。
 知らないなぁ。」

俺の誘拐事件とかってあったっけ?
でも、一応騎士の入れ替わりは激しかったな。
騎士ビラットが専属の護衛騎士になってからは
落ち着いたと思うけど。
ふわりと ピンク色のいつも笑っている、やめた騎士を思い出した。

あぁ、そういえば
あいつも元気かな。


「それでな、その親戚だった俺はめでたく王宮騎士から左遷。
 まぁ東奥のモントレー領だったから 飯はうまかったが、
 出世街道からは脱落だな。」

「へぇ。じゃ ダイナラスさんって貴族?」

王宮騎士はそれなりの身分というか
後ろ盾が必要だったはずだ。
身元保証っていうの?

「がはは。まあな。
 といっても、攻撃魔法があまり使えず
 家を追い出されて、王宮騎士になったんだがな~。」

騎士団からしたら『増幅』はレアスキルだから即採用だな。
攻撃魔法が強い だけなら騎士にいくらでもいるけど
それをさらに強める、なんて 使い勝手が最高だ。ぜひうちの班にって
引っ張りだこになるぐらいだろうな。

「えぇー。あんなに『増幅』魔法がうまいのにぃ
 きびしぃのね。貴族様って。」

イチカ姐さんが ぱくっと おつまみのナッツを口に入れる。

「がはは。サポートスキルでも、オレのは『増幅』しか うまく使えねぇからな。
 魔法力が高くても、オレの家は『攻撃系』の家系だったから
 こういうサポート系の能力は嫌煙されるんだよ。」

「あらぁ。めんどうねぇ。」

「で、でも、ダイナラスさん。
 騎士辞めたの?もったいなくない?」

一応 給料も安定していて
手当もばっちりのはずだ。
一押しの優良就職先だよ?

「だから!騎士はまだやめてねぇよ?
 まぁ、ちょっと家の事情でなぁ。
 月に一度しか「騎士の仕事」がないんだよ。
 暇だから、冒険者をしながらやってるんだよ。
 ほら 岬の結界・・・」

「ちょっとぉ。ダイナラスさんったらぁ。
 それは、『秘密指令』に関すること、じゃないの?」

え?なにそれ。

「す、すいません。俺、余計なこと聞いて。」

「ん?いいや、坊主のせいじゃねぇよ。
 そーだなー。ちょっと、秘密の作戦中だ。」

「・・・それって、いっちゃぁダメなやつじゃ?」

がははは。といって
ダイナラスさんは 俺の頭をぐりぐりと撫でた。

気になるけど、
まぁ、それは個人情報だし。込み入ったことに首を突っ込みたくないしな。


ちなみに、報酬の『おいしい魚介類』はあっという間に
からっぽになりました。 海鮮パエリア、最高だな!