僕のペースを乱さないで

ベッドにキミのカラダをゆっくりおろした。

キミは伏せ気味に横向きになってたから
顔はよく見えなかったけど、
それでいいと思った。



顔のよく見えないキミに、屈みながら僕は言った。

『ゆっくり眠ってくださいね。おやすみ。』

僕はソファーに戻ろうとした。

その時、キミが僕の服を掴んだ。

え?

驚いて振り返った。



瞳にうっすら涙をためたキミが僕を見ていた。

『・・・行かないで』



ドクッ・・・・
心臓が大きな音で鳴った気がした。


なんだろう・・・

この気持ちは・・・


胸が締め付けられるような感覚。


胸が痛くて息ができないような。


そしてキミから視線をはずせない。



ポロ・・・


きみの瞳で受け止めきれなくなった涙が
片方だけ頬に一雫こぼれおちた。


「おねがい・・・」


いつもより細い声で、肩をふるわせるように息をしてるのがわかる。


僕はその瞳に吸い込まれるようにキミを見つめた。



『・・・いいですよ。姫のためなら。』

あとさき考える余裕もなく、
ぼくはそう言っていた。



キミは微かに微笑んで瞬きをした。


その瞬間、両方の目に溜まっていた涙がポロポロこぼれた。


僕はキミをそぉっと抱きしめていた。


僕の胸で泣いているキミの頭に手を当てて呟いた。

『もぅ 泣かないで 』

キミは女の子の甘い香りがした。


そしたら、僕の胸に顔をうずめて泣いているキミが、

僕の脇腹から背中の方へ手をまわして、

僕のカラダをそっとだきしめてくれたんだ。

!!

なにこれ・・・ヤバい。

自分の中で、心臓の鼓動が少しずつ大きく、そして早くなっていくのがわかる。

胸の中からじわーっとあったかいなにかが滲み出てくるような感覚。

僕の背中で感じているキミの手のひらのぬくもりが心地いいのに落ち着かない、不思議な感覚。

そして、こんなに近くにいるキミが今まででいちばんかわいく感じる。

もぅダメだ・・・
完全におちたな・・・

僕は恋に落ちたことを、もぅ認めるしかなかった。