もうここは強引にいくしかない。
僕はベンチから立ち上がった。
座ってるキミの正面に立って、右手を差し出した。
『行きましょ?』
キミは泣き顔のまま僕を見上げた。
ドキッ。
ヤバい・・・かわいい
こんな異常事態で思うことじゃないんだけど、
雨と涙で濡れてるキミの潤んだ瞳が上目遣いで僕を見るキミの顔が艶かしくていつものキミじゃなくみえた。
キミは差し出した僕の手をとって立ち上がった。
駅の方へ向かって僕たちは歩き出した。
雨と風がさっきより強い。
傘はささなかった。もうさす意味がなかったから。
地面はちょっとした小川か?ってくらい、
降った雨が溜まりつつ流れていて、
ヒールを履いているキミは
歩きづらそうであぶなっかしかった。
グラッっとよろけそうになったキミの腕をパシッっとつかんだ。
『大丈夫?』
『ごめんなさいッ』
『雨スゴいですね。。。
駅まであと少しだからつかまってください。』
駅に近づくにつれて、人も増えてきて、
でもなにか違和感を抱くくらい人がたくさんいすぎな気がしていた。
『早瀬さん、家どこですか?JR?』
『はい。中央線です。』
『もしかしたら、とまってるかも、電車。』
案の定、改札の上の電光掲示板は、
電車がすべて動いていないことを伝えていた。
そういうことか。
ここにいるのは、避難難民なんだ。
今日の夜中がピークだって聞いてたから、
今日はもう電車は復旧しないだろう。。。
今日は帰れない。
ここから近いホテルに泊まるしかない。
僕は駅員にこえをかけて状況をきいた。
電車がとまったのは30分前くらいからだという。
『早瀬さん、僕たち今日帰れないっす。』
『え・・・』
キミはきっとこの状況についてこれてないみたいだったから説明した。
『どっか泊まれるか聞いてみますね。』
ケータイで調べて、近くのホテルに電話をかけて
空きがあるか確認した。
『・・・そうですか・・・』
この事態でどこのホテルも満室状態のようで、
片っ端から電話しては断られた。
ひとつだけ、ダブルであれば空いているところがあった。
念のためキミに確認をとって、
それでもいいってキミは言ってくれた。
僕たちは、また歩き出した。
といっても、徒歩3分ほどの距離だった。
ホテルの前でキミは立ち止まった。
『ここ・・・? ですか?・・・高そう』
『ここしか空いてなくて』
そこは、高級ラグジュアリーホテルだった。
部屋に入って、すぐにバスにお湯を張って
キミに入ってもらった。
着ていた服はランドリーバッグに入れて最短でクリーニングに出した。
その間はホテルのナイティ(パジャマ)とガウンで過ごすしかなかった。
キミのあと僕がシャワーを浴びてバスルームから出てきたとき、
キミは部屋のソファーの片隅でちょこんと体操座りして顔はうつ伏せていた。
『早瀬さん、髪乾かしますか?ドライヤーで』
キミの髪は濡れたままだった。
キミはうつむいたまま、首を横に振った。
『カゼひいちゃいますよ?』
『・・・なにもしたくないんです。
私のことは見て見ぬふりしてください。』
そうだった。
今日はいつものキミじゃなくて、
別人の無気力な女の子なんだった。
『隣 座ってもいいですか?』
僕の問いかけにキミは無言でコクッっと頷いた。
3人描けのソファーの右のはしっこにキミが座ってて、
僕は左のはしっこに座って、ドライヤーで自分の髪を乾かしていた。
横目でチラッとキミをみたら、
キミは相変わらず体操座りにうつ伏せたまま。
だけど、髪の毛の先から、雫がポタリ・・・
僕はドライヤーの風をキミの髪に当てた。
『乾かしますね』
キミは何も言わす、頷いた。
なんか・・・かわいいな・・・子どもみたいで。
いつもと違う今日のキミは、
わがままな子どもみたいで新鮮だった。
こういうの、「ギャップ萌え」っていうのかな。
はじめてキミにあった日にもギャップは感じたけど、今日のギャップとはまた違うものだった。
僕はソファーの左端から真ん中に移動して
キミの左隣から髪を乾かし始めた。
