「そ、その…に、荷物、持って来たの」
ユウが無理矢理に彼女を押し倒したわけでないことは分かる。
雪乃さんの幸せそうな顔を見れば。
「ユウ…行かないで」
とろんとした瞳でユウを引き止める切なげな表情を見れば、合意の上だと分かる。
けれどユウは私の手を引いて、雪乃さんの部屋の扉を閉めた。
「どうも」
私からバッグを受け取ったユウは弁解もなく、背を向けた。
「どこ行くの…?」
「風呂」
「雪乃さんはどうするの」
「放っておけば、寝落ちするだろ」
「…なにしてたの」
いくら拒絶しても結局、椎名雪乃さんのような美人に迫られて心動かない男はいないのだろう。
「なにって?部屋に運んだだけ」
「私、お邪魔だったよね?せっかく良い感じだったのに」
「ガキは黙れよ」
面倒くさそうな反応を見て、頭に血が上った。
「ガキで悪かったですね!ガキでも分かるけどね!2人がなにしようとしてたかなんて。お願いだからちゃんと鍵かけてよ!」
一気に喚き散らす。
自分の気持ちが、よく分からなかった。


