「私、元気になったよ!」
「おまえ…」
「ユウ兄ちゃんのおかげで、元気になったの。小学校にも通えてる!」
「すげぇじゃん」
女の子の頭を撫でたユウは、心から嬉しそうに笑っていた。
「ユウ兄ちゃんが病院にたくさんの寄付をしてくれたから、私は生きられたの!私も大きくなったらお医者さんになって、たくさんの人を助けたい!」
「医者か。かっこいいな」
女の子の目線まで腰を下ろしたユウは優しい目をしていた。
「俺も頑張るから、おまえも頑張れよ」
「うん!」
感動シーンを逃さまいと、シャッター音が響き渡る。ユウのファンが携帯を構えていた。
注意しようと一歩踏み出した私をマネージャーは止めた。
「俺のことはいくら撮っても構わないけど、他の子の顔は撮るなよ。な?」
そう言って笑ったユウへまたシャッターが下される。
「ユウ兄ちゃんの大切な人は、よくなったの?」
無邪気な子供の問いに、ほんの一瞬、ユウは静止した。しかし次の瞬間には笑顔で言った。
「…ああ、元気だよ」
それが大人の嘘だと、何故か分かってしまった。


