「次は病室のシーンだな。理子の出番はなしと」
最終章のページをユウと捲る。
台本の最後は小説と同じように、
病室で海とリョウが口づけを交わす場面だ。
その後、海が病気に勝ったか否かは語られていない。
「よし、冒頭から通すぞ。感情を込めろ、想像しろよ!……原作者に言う台詞じゃねぇか」
「ううん、頑張る…」
私は海の最後の願いを、叶えることができなかった。
彼女の望んだ、未来のあるハッピーエンドを想像できず、結局、結末を読者に委ねてしまった。
海のいない未来をイメージすることができなかった。物語の中の未来で、どれだけ海が笑おうと天使のようなあの笑顔はもう二度と見られないのだから。


