「ここ、俺の家」
「ユウの?」
店員の案内もなくずかずかと個室の扉を開けていたため芸能人ともなるとVIP対応なんだな、なんてことを考えていた私はユウの言葉に立ち上がった。
「入り口で挨拶したのが母親」
「嘘!なんで早く言ってくれなかったの!」
品の良さそうな女性が着物で出迎えてくれたが、まさかお母さんだとは思わずに軽い会釈だけで済ませてしまった。
「いいから台本出せよ」
「…帰りに挨拶させてね」
「あ?息子さんを"ください"ってか」
「はあ?まさか!それにそういうのは男の台詞でしょ」
リュックから出した台本をユウに投げつけたい衝動をグッと堪える。
「おまえも結婚願望とかあるのか?」
冷静に問われた言葉に、首を横に振った。


