「別におまえもそう悪くねぇよ、堂々としてろ」
え…。
「え…」
心の中で驚いた私に対して、雪乃さんの呟きが声に出ていた。
「女優に見惚れてるヒマあったら、台本暗記しろよ」
「分かってるわよ!」
完全なる照れ隠しで、声を荒げた。
椎名雪乃さんを目の前にして抱いた圧倒的な劣等感を、ユウは感じとったのだろう。
そして優しい言葉で私をフォローしてくれた。
「ありがとう、ユウ」
お礼の言葉は無視されたけれど、ユウの気持ちは十分に伝わった。
ああ、悔しいけどね。
世の中の女の子がユウに夢中になる理由に、少し気付いてしまったんだ。


