BLUE GIRL


主演、海役の椎名雪乃さんは連続ドラマを3本抱えていて大忙しの女優さん。監督によると後1時間くらいでドラマの現場から駆け付けてくれるらしい。


それまでユウと2人きりで会議室にいることになったわけで、

編集部の美島さんは監督の独占インタビューを決行しているため席を外している。



よく知る物語のはずなのに。

台本に文章として連なるストーリーは全く別物みたいだ。理子の台詞がちっとも頭に入らない。


額に嫌な汗を掻く。


そもそも美島さんの力を借りてやっと完成させた小説で、私は普通の18歳だ。

小説を書く才能などあるはずもなく、ましてや芸能界に飛び込むほどの魅力もない。


平凡という言葉がしっくりくる私が、人気俳優と肩を並べて息をしてる意味が本当によく分からない。


「なに緊張してるんだよ」



横から伸びてきた大きな手が、台本をもつ私の手に重ねられた。


「震えてるぞ」


顔を上げた私の目に映ったユウは、
優しく微笑んでいた。